【花まるコラム】『オンライン授業時代の新しいコミュニケーションの形』内山朝就

【花まるコラム】『オンライン授業時代の新しいコミュニケーションの形』内山朝就

 新型コロナウイルスの流行により、私たちの生活が大きく変わった。「オンライン」の割合が大きくなった。子どもたちの世界にも、オンライン授業という授業形態が浸透し始めている。スクールFCでも、感染対策の観点から、全クラスオンライン授業に踏み切る時期があった。そのオンライン授業で一人、新しいコミュニケーションの形を見せた子がいた。

 小学5年生、Rくん。全員の顔が見えている私のパソコンの画面で一人だけ目立っている。頭を抱えるポーズをとったり、うしろにのけぞって驚く動作をしたり、ガッツポーズと同時に笑顔を見せたり…。全身を使いながら授業に参加していた。彼の考えていること、理解度が手に取るようにわかった。つまり、Rくんは言語によるコミュニケーションを使わずに自分の思いや心中を相手に伝えきったのである。これが、オンライン授業時代の新しい授業の受け方なのだと感じさせた。

 ただ、このRくん、低学年期はここまで自分の感情を表に出すような子ではなかった。真面目に取り組んでいるが、声を発することも、体を動かして何かをアピールすることもほとんどなかった。では何が彼を変えたのだろうか。

 一つはスクールFCオンライン校に通ったことだと考えている。担当の先生は「受け身にならず、能動的に授業を受けるように」と伝えていた。その言葉を彼なりに実践し続けたのであろう。また、お母さまに話を聞いてみると、「最後は負けず嫌いな性格が彼を変えたのではないか」とのことだった。授業中、質問をしたいと思っていても躊躇することが以前はあり、その悔しさのあまり泣き出すこともあったようだ。そういった前に踏み出せなかった経験の積み重ねが、負けず嫌いな彼に火をつけた。その結果、生み出された解決策が非言語によるコミュニケーションだった。現在、Rくんは対面授業の校舎に切り替えて授業を受けているが、実に楽しそうだ。「よぉし!」「え~!?」など言葉を使いながら反応を示し、ときには言葉巧みにツッコミを入れながら国語の読解を楽しんでいる。オンライン授業で見せていた全身リアクションも健在だ。質問もよくしている。殻を破った、という表現がぴったりである。

 Rくんのこの成長は「生きる力」だと感じる。新型コロナウイルスによって世の中は大きく変わった。会議も授業もオンラインのものが増えた。それによってコミュニケーションに制限が増え、相手に自分の思いを伝えることが難しくなる部分も増えた。しかし、その制限されたなかで自分の思いをどう伝えればいいのかを考え続けた結果、彼はたどり着いた。オンライン時代の新しいコミュニケーション方法に。

 いま、プレゼンテーション力など、言語によるコミュニケーション能力が注目されている。しかし、非言語によるコミュニケーションも大切であることを彼は教えてくれた。だから、子どもたちに二つの基本的な非言語コミュニケーションを伝えている。それは「うなずき」と「拍手」だ。うなずきは相手に自分が理解していることを伝えることができる。「拍手」は相手に尊敬の念や賛辞を伝えることができる。この取り組みを始めてから、子どもたちはどことなく表情が豊かになったように感じる。クラスの雰囲気も、互いに助け合うなど良くなった。私も子どもたちの思いを汲み取りやすくなった。非言語コミュニケーションも使うことで、お互いのことをより知ることができるようになった。

 最後に、子どもたちに伝えたいこと。コミュニケーション方法は「話す」だけではない。みんなの前でまだ話せなくてもいいよ。まずは自分のできるコミュニケーションから始めてみよう。そして自信がついたら、いろいろなコミュニケーション方法にチャレンジしてみよう。伝わるって楽しいよ。

スクールFC 内山朝就(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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