日々子どもたちと過ごすなかで「なんで?どうして?」という素朴な疑問に困ったことはありませんか?答えてあげたい気持ちはあっても、つい後回しにしてしまったり答えられなかったり、という経験がありませんか?
教室でも子どもたちから「なんで花まるでお菓子食べたらダメなの?」「宿題ってなんでやらないといけないの?」などと聞かれることがあります。大人にとっては常識であるものもあれば、答え方に悩むもの、核心に迫ったものもあります。毎回しっかり答えるには大変さも感じる子どもの純粋な疑問の数々ですが、おもしろさも隠れているのです。今回はある日の低学年授業で子どもから出た疑問をご紹介します。
その日は1年生が時刻を読み解く時計の問題に取り組みました。全員に向けて説明をしたあと、眉間にしわを寄せてムッとした表情で1人の男の子が私に近づいてきました。そして私に向かって「なんで0じゃないの?」と問いかけてきました。それだけでは何が知りたいのかわからず、「どういうこと?」と尋ねると「12時もあるけど0時もあるじゃん。何で12しか書いてないの?」と言います。私は“時計とはこういうもの”と思い込んでおり、疑問に思ったこともありませんでした。男の子に問われて初めて、なんでだろう?と不思議に感じました。その質問を聞いていた周りの子も同じく不思議に感じていました。しかし誰も理由を知らず、0が書かれていない答えを見つけることはできなかったのです。「先生も0がない理由を知らないから調べてみるね」と伝えました。
授業後になぜ時計に0がないのか調べてみると、時計ができたときに0という概念がなかったことが理由のようでした。1~12で初めて時計が作られ、それ以降脈々と使われ続けていまに至るようです。
このことは私にとっても初めて知る事実で、新発見のわくわく感を久しぶりに味わわせてくれました。気持ちそのままに、次週子どもたちに調べた結果を伝えました。「0っていう数字より時計のほうが早く生まれたんだって!」と話すと、「時計のほうがおじいちゃんってこと⁉」「知らなかった~!」と驚きの声が続々と聞こえてきました。先週は違うことに取り組んでいた2・3年生もこのときは一緒に聞いており、「言われてみたら不思議だね!」「デジタル時計は新しいから0があるのか!」と共感や納得をしているようでした。
子どもたちは物事への先入観が少なく、まっすぐに受け止めることができます。だからこそ純粋な疑問を次々と投げかけてくるのでしょう。普段、余裕がなく答えられずに流してしまう疑問のなかには、自分では気づけなかったおもしろい発見につながるものが隠れていることもあるのです。新発見は大人も子どもも嬉しいもの。教えてもらったり調べたりして知ったときの喜びは、新しい発見への欲求になるのではないでしょうか。子どもたちは純粋な疑問を生み出す達人です。「次はどんなわくわくを届けてくれるのだろう」と思いながら子どもたちの疑問に耳を傾け、新発見の喜びをともに実感していきたいと思います。
花まる学習会 田中理紗子 (花まるだより2022年4月号掲載)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。