花まる学習会と、進学塾部門のスクールFC。両者を比べたときによく出てくるのは、スクールFCは花まるより「難しい」ことをやる場所だ、という言葉やイメージ。子どもたちだけではなく、保護者のみなさまにも、もっと言うと、スタッフの間にもある。
でも、ちょっと待って。ただ「難しい」だけではない。「難しい」という言葉は、無意識に脳内で考えることをやめてしまうような、その問題をつき放してしまうような、そんなニュアンスを含んでいるように思う。たしかにスクールFCでは、受験に向けて「難しい」問題に取り組むのだが。
ある日、6年生の受験クラスで国語の発展問題を解いていた。ここで扱っている問題は、基本問題よりも難易度が高く、いわゆる偏差値上位校を目指す子どもたちが解いておくべき問題。「難しい」というよりは、歯ごたえのある問題で、じっくり読んで問題を解くと同時に、その考え方に触れておいてほしいという意図がある。
このクラスにはやんちゃな男の子が多いため、物語の概要は読み取っていても心理的な部分が読み取れなかったり、自分の感覚のみで解答してしまったりすることが多い。その日は心のなかで葛藤しながらも行動に移していく幼い子どもの姿を描いた内容だったので、かえって読み取りづらかったのか、文章が長いためか、問題を解いている時間は真剣そのもの。文章を読み解くための静謐な時間が流れていた。
問題を解いたら、一息入れて解説の時間。選択肢問題、抜き出し問題、記述問題におけるポイントをつかむと同時に、正解不正解がはっきりし、正解しているとうれしい、という感覚を味わえる時間となる。
そんなとき、1人の男の子が「カーカッカ」と奇妙な声で笑い始めた。教室の真んなかあたりにいるその子にみんな一斉に注目。あまりに不思議だったので、私もつい「なんだ、その漫画のキャラクターみたいな笑い方。アシュラマンか」とツッコミを入れてしまった。このアシュラマン、「キン肉マン」という昔のアニメのキャラクターなので、子どもたちは気づかず、何事もなかったかのように次の問題の解説に移る予定だった。
ところが、クラス内は大爆笑。半数くらいの子は親の影響だろうか、そのキャラクターを知っていた。そればかりでなく、「え、それ何?」と言って、辞書で阿修羅について調べ始めたり、それに補足説明してあげたりる子も。5分くらいだろうか、ひとしきり笑ったあと、再び記述問題の解説に戻った。
彼がなぜ、突然そんな笑い方をしたのか定かではないが、教室全体にユーモラスな雰囲気がたちこめ、みんなが笑い転げていた。私自身、みんなの笑っているそのなごやかな雰囲気に、頬がゆるんだ。
子どもたちが花まる学習会で学んできた、メリハリをつけて気持ちを切り替えること。その姿勢は、スクールFCに入ってからも学びの場面の端々で見受けられる。どんなに難しい問題であっても、こういった緊張が解けた一瞬にフっとした笑いが生まれ、また新しい問題に挑戦できるようになる。そんな雰囲気が教室中に満ちている。
そう、スクールFCは、「難しい」問題に「楽しく」取り組める場所なのだ。
スクールFC 菅原大輔(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。