【花まるコラム】『進める道は進んでみるもんだね!』浦岡翠

【花まるコラム】『進める道は進んでみるもんだね!』浦岡翠

 暑さもようやく一段落し、季節の移り変わりを感じる頃となりました。この夏、楽しい経験をした子もいれば、悔しい思いをした子もいると思います。「仕方ない」だけでは納得できないこともあることでしょう。月並みな言葉になってしまいますが、いまできることは、未来に希望を託すことだと思います。いま夏できなかったことを、次の夏こそ!と気持ちを前に向けること。簡単ではないですが、花まるに通うみんななら、できると信じています。さまざまな想いを、明日に向かう活力に!


 教室で子どもたちと接していると、子どもたちから思いもしないような言葉が飛び出ることがあります。
 年長クラスでのこと。迷路の課題に取り組んでいたHくん。
「今日の迷路はなんだか難しいなあ。うーん」
と頭を抱えながら、鉛筆をあちこち動かして考えています。しばらく悩んだあと、
「できたー!やっと解けたよ~」
と安堵の表情を浮かべました。見てみると、行き止まりに出合って別の道に切り替えた線がたくさんあり、本当によく考えて取り組んだことがわかりました。
「最後まで諦めずに考え抜いて、素敵だね」
と伝えると、
「いっぱい迷ったんだけど、進める道は進んでみるもんだね!」
と笑顔で言いました。私は、まさかそんな言葉が出るとは思わず近くにいたテーブル講師と目を見合わせました。そして、
「そうだよね!たしかに前に道があったらまず進んでみることはすごく大切だよね」
とHくんに伝えました。

 花まる学習会では、何でもとにかくやってみる力を『始動力』と呼んでいます。一見、やみくもに始めるのは…と思われてしまうかもしれないのですが、実はとても大切な力です。
 初めての問題や解き方がわからない問題に出合うことは、勉強をしていくなかではよくある場面です。そのときに手が止まってしまうと、その次のステップに進むことはできません。さらに、そこで
「これってどうやるの?」
と質問することが癖になると、自分の力でやり始めることのハードルが上がってしまいます。そして、
「これは難しい」「わからない」「できない…」
と壁をつくってしまいます。

 花まる学習会では、年長クラスの「思考実験」、低学年クラスの「なぞぺー」(思考力教材)、高学年クラスの「Sなぞ」(思考力教材)を通して考える幅を広げたり、さまざまな角度から考えたりして、楽しみながら思考力を鍛えています。学年が上がるほどレベルは高くなっていきますが、そこで「難しいからできない」ではなく、「おもしろそうだからやってみよう!」と前向きに取り組める気持ちを育みたいと思っています。この『始動力』は勉強だけでなく、これからの人生を歩むうえでも重要です。何か新しいことを始めるときに、「いや、やったことないし…」と諦めてしまうと、その先に待っている出会いの機会はなくなってしまいます。子どもたちには、主体性をもって新しい環境に飛び込んで、はじめましての人や物事との出会いを大事にしてほしいです。そうすることで、みんなの人生がより豊かになっていくでしょう。ご家庭でお子さまの取り組みを見守られる際には、
「新しい問題だね。レベルアップ問題だけれど、おもしろそうだね!」
と、プラスの声をかけていただけますと幸いです。

花まる学習会 浦岡翠(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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