【花まるコラム】『子どもの目線』佐々木真音

【花まるコラム】『子どもの目線』佐々木真音

 子どもの頃、学校の登下校の時間にいもむしを見つけると鳥肌が立ったことを覚えています。しかし、あるときふと、いもむしを見なくなったと気づきました。それもそのはずで、身長が伸びるにつれて、足元からは離れた世界を見るようになっていたからでした。
 子どもと大人では、見えている世界が違う。ある日の授業で、改めて気づかされることがありました。

 年中クラスの思考実験。ストロー飛行機を作り、飛ばす実験を行ったときのことです。ストローの両端に異なる大きさの紙で作った輪を貼り付けて飛行機は完成です。この回は、どうやったら長く遠くまで飛ぶ飛行機が作れるのか、その過程を思考するのが醍醐味です。投げ方、飛ばす角度、持ち方、作り方、テープの貼り方。いろいろな要素があり、それらを上手く組み合わせることで長く遠くまで飛ぶ飛行機になっていきます。

 ストロー飛行機を作り、思い思いに飛ばしていく子どもたち。私も投げて、飛ばして見せます。子どもたちもそれを真似て、飛ばします。「どうやったら長く遠くまで飛ぶ飛行機が作れるのか」を思考していたはずが、いつの間にか、子どもたちは近距離から飛ばしてロッカールームに入れるゲームに夢中になっていました。そのゲームが終わると、一人の子がロッカールームの上に向かってストロー飛行機を飛ばし始めました。

「乗せたー!」
「乗せたの~?」
「うん!」 

子どもの背丈では到底取れない高さにあるため、私が取って子どもに返します。
「はい」
と返した次の瞬間には、再び、
「えい!」
「あははは」
と、子どもたちロッカールームの上に飛行機を乗せる挑戦に夢中です。

「えー?また乗せたの?」
と、やり取りすることが楽しかったのか、純粋に乗せることが楽しかったのか。その子なりに楽しさを見出している様子でした。

 それを見ていたほかの子も同じようにストロー飛行機を乗せ始めました。そして、3つの飛行機が1か所に乗ったとき、子どもたちの盛り上がりが最高潮となりました。

 何が子どもたちの盛り上がりにつながっているのか、子どもたちの思考回路がつかめないでいましたが、ふと目線を子どもたちに合わせて見ると気づくことがありました。

 子どもの目線でストロー飛行機を下から見ようとすると、ロッカールームの上の飛行機は見えませんでした。当たり前のように自分の目線でしか物事を見ていなかったことに気づかされました。
 子どもたちは手の届かない見えない場所にストロー飛行機を飛ばすことにおもしろさを見出していたのかもしれません。これが子どもから見えている世界か、と実感した瞬間でした。

 子どもの目線と大人の目線で見える世界は違いますが、大人は子どもの目線で物事を一緒に見てあげると、その世界観を共有できることを感じました。
 子どもの目線に立って、子どもが見ている世界観で一緒にこれからも学びを共有できたらと思います。

花まる学習会 佐々木真音(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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