【花まるコラム】『答えのないものに立ち向かっていく』春木満之

【花まるコラム】『答えのないものに立ち向かっていく』春木満之

 先日、小学生クラスで3学期の特別授業「思考実験大会」を実施しました。この思考実験大会は、ほかにも特別授業でおこなっている国語大会や算数大会とはまた違った趣向のゲーム大会です。年に1回ということもあり、私自身も毎回非常に楽しみにしています。国語大会、算数大会ではその教科の知識を使って、決まった答えを導き出していく問題が多いのですが、思考実験大会は明確な答えのないものに対して、自分なりの思いや考えを表現していきます。まさに「思考」が必要となる、近年の学習指導要領でも言われている「問題解決型」「課題解決型」のゲーム大会です。明確な答えがないぶん、あがってくる答えや考えは本当にさまざまで、毎回自分では考えもしないアイディアに出合い、子どもたちの想像力や独創性に驚かされるばかりです。

 今回の思考実験大会では、何のランキングかを考えるゲーム、 お題 (純粋に腕をつけてみる、強そうなもの、おいしそうなもの、触りたくなるものetc…)に沿ってミロのヴィーナス像の欠けている腕の部分に自分の考えた絵を付け足していくゲーム、落語の「見立て」のように、鉛筆やハンカチを利用してそれを別のものに見立てて演技をするゲーム、音楽を聞いて何をイメージするか、どんなものが思い浮かぶかを言葉で書いていくゲームなどを行いました。

  そのなかのミロのヴィーナス像にお題のものを付け足していくゲームで一際印象的だったのが、2年生Sくんの作品でした。普段の授業では、どちらかというと大人しい子で、なかなか自分の考えなどを発表するタイプではないのですが、見事ほかの誰も考えないような答えを描きあげました。「強そうなものを付け足してみる」というお題のときです。剣や銃などの武器を想像して描いていく子が多いなか、Sくんが描いたのは、なんと「自分のお母さん」の絵。 ヴィーナス像にさらに人間の絵をくっつけるという独創性もさることながら、「強そうなもの」というフレーズで、自分の母親を瞬時に思いつく想像力やユーモアセンスには驚かされました。私の頭のなかでは、「母は強し」という言葉がその日はずっと駆けめぐっていました(Sくんはきっと、母は偉大な存在だと思っているでしょう)。その後、Sくんの描いた答えを発表すると、教室の子どもたちからは爆笑と賞賛の嵐となりました。普段の大人しいSくんが満面の笑顔で喜んでいた姿は印象的で輝いていました。

 答えのないものに対して自分なりに考えて行動していく力は、これから社会の荒波を生き抜いていくうえでとても重要です。今回の「思考実験大会」のような、半ば遊びとしか思えない活動が、自分で考えて、行動することの大切さや楽しさを感じるきっかけになってくれることを心から願っています。

花まる学習会  春木満之 (2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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