長男が一年生になりました。花まるの小学生クラスが楽しいらしく、「毎日やりたい」と言うものですから、朝起きてすぐの20分間、「ミニ花まる」と称して、あさがお・サボテンに加えて、四字熟語やたんぽぽ、キューブキューブなどを行うことが日課となりました。普段帰りが遅い私にとって、息子と一対一で向き合える貴重な時間。ようやく家庭内で介在価値を発揮することができると私が一番張り切っております。 そんな息子と過ごすお気に入りの時間が他にもあります。土日の外遊びや、寝るときに自作のお話を聞かせる時間、そして、DVDタイムです。トーマスやドラえもんに加えて、息子が好きなラインナップに結婚式のDVDが入っています。あまりの恥ずかしさから、妻は挙式を、私は披露宴最後の新郎挨拶をいつも早送りします。先日、妻と息子たちがお風呂に入っているときに、いつも早送りししている披露宴の最後をこっそり見てみたのです。思いがけず、こみ上がるものがありました。ずっと母に伝えたかった感謝がやっと言えた瞬間だったからです。その背景を吐露させていただきます。
いまでこそ日々楽しく平和に暮らしている私ですが、実は幼少期は暗黒時代だったのです。当時、一番怖かったのは、お化けでもジェットコースターでもなく、毎晩のように聞こえてくる両親の喧嘩でした。布団をかぶり耳を押さえながら怯えていた日々を、まるで昨日のように覚えています。そして、忘れもしない、雨が降る日曜の昼間。母は私を家の外に連れ出し、私の目をまっすぐ見てこう言いました。
『いまから、お父さんと別れてくるよ。でも、あんただけは絶対守るから』
当時7歳の私に向けた、母の本気の一言。このときの母の顔は、いまでも忘れることができません。その日から、母は何度も転職を繰り返しながら私を養ってくれました。「また転職するの?」という心配をよそに、「倍率が20倍の会社に採用されたよ!」などと語る母。そのたくましさを子ども心ながら誇らしく思えたものです。途中で再婚もしました。信じられませんでした。新しい父は言うまでもなく私にとって仇のような存在。しかし、なす術もなく長い年月を経て、気づけば本当の父になっていったのです。そんな波乱万丈な子ども時代でしたが、小学生時代は人を笑わせることばかりを考え、中学・高校では人間関係と恋に悩み、「勉強しなさい!」という母の声に猛反発しながらも大学時代を経て、無事社会に出ることができました。こんな人並みの幸せを味わえているのは、まぎれもなく母の存在があったからです。そんな母に披露宴最後の新郎挨拶で伝えた言葉です。
「幼児期の記憶は、ほとんどありませんが、一つだけ覚えていることがあります。それは、『あんただけは絶対守る』という母の言葉です。この言葉に何度も救われてきました。いまの自分があるのは母のおかげです。そして、私は新しい家族を幸せにする自信があります。なぜなら、いままで、私が幸せだったからです。お母さん、いままで守ってくれてありがとう」
やがて、子どもたちは大人に、親になっていきます。花まるの子どもたちを見ていると、いま幸せそうだから、将来もきっと幸せな家庭を作るのだろうなと想像してはニヤニヤしてしまいます。今年度が、子どもたちにとって、お母さま・お父さまたちにとって、どんな幸せな一年になるのか楽しみです。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
花まる学習会 臼杵允彦(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。