【おはなしのキッチン❺】『子どもに語る グリムの昔話』田畑敦子 2022年10月

【おはなしのキッチン❺】『子どもに語る グリムの昔話』田畑敦子 2022年10月

 ディズニー作品でおなじみの『シンデレラ』ですが、原作ともいえる物語はいくつか存在します。なかでも、シャルル・ペローの『サンドリヨン』とグリム童話の『灰かぶり』が有名ですが、今回はグリム童話の『灰かぶり』をテーマにしました。

 『グリム童話』はグリム兄弟が作りましたが、彼らがゼロからお話を作ったわけではありません。各地に口頭で伝わる物語を、本にまとめて出版しました。そのため、さまざまな地域にグリム童話によく似た物語があるのです。
 よく、グリム童話は残酷だ、と言われます。今回の『灰かぶり』も、意地悪な姉たちが報いを受ける場面がありますが、昔話の特徴として写実的に語らない、というものがあります。口伝えで語り継がれてきた物語のため、写実的に語ってしまうと、聞き手がストーリーを追えなくなってしまうのです(個人的には、グリム童話よりも日本の昔話の『三枚のお札』のやまんばや、『かちかち山』のほうが怖かったです)。
 その意地悪な継母や姉たちが、灰かぶりを舞踏会に行かせまいとレンズ豆を灰のなかにまいてしまいます。レンズ豆は栄養価が高く、海外では定番のたんぱく源としてポピュラーな食材のようです。灰かぶりは到底1人ではすべてを拾うことができず、物語のキーとなる鳥に助けてもらい、無事に拾い切ることができるのです。そして、その鳥がどこからか持ってきた金と銀の素敵な服を着て、舞踏会に出かけることになります。

 家ばとさん、山ばとさん、それから空の鳥たちや、みんなみんな、きておくれ。わたしがひろうのてつだって!
 よい豆は、おなべのなかへ、
 わるい豆は、おなかのなかへ

佐々梨代子・野村泫 訳『子どもに語る グリムの昔話4』こぐま社

 ディズニー版ではたった一度だけ舞踏会に出かけていますが、グリム版では3回も舞踏会に出かけます(そしてその度にレンズ豆の意地悪をされています)。この「3」という数字は、昔話によく登場します。3人兄弟だったり、3つのアイテムだったり。同じ展開を3回繰り返すという手法もよく使われており、『灰かぶり』はまさにそのパターンです。3回舞踏会に行き、同じ場面を繰り返すことで、物語にリズムが生まれます。前回の『おだんごパン』でも紹介しましたが、こうした繰り返しが、子どもたちは大好きです。聞いていると安心感を覚えるのだそうです。
 自分で本を読むことで読書の幅は広がります。その前のステップとして、自由に想像の翼を広げて物語の世界に没頭できるところに、語りの良さがあるのではないでしょうか。

 

花まる学習会  田畑敦子

 

『子どもに語る グリムの昔話4』
佐々梨代子・野村泫 訳 (こぐま社)


【レシピ】 レンズ豆のスープ煮

 

レンズ豆150g
にんにく1片
玉ねぎ1/6個
オリーブオイル大さじ1
水400ml
塩小さじ1/2
月桂樹の葉1枚
黒胡椒少々

①レンズ豆は皮が破れないように優しく洗ってざるにあげて水気を切る。
②にんにくと玉ねぎはみじん切りにする。
③鍋にオリーブオイルと②のにんにくを入れて弱火にかける。にんにくの香りがしてきたら玉ねぎを加えて中火にする。玉ねぎがしんなりするまで炒めたら、①のレンズ豆を加えさっと炒めて、水を注ぎ入れる。塩と月桂樹も加え、沸騰したら、弱火・蓋をして20分加熱し火を止める。黒胡椒を加えてひとまぜしてできあがり。

【レシピ・写真提供】
料理家 江口 恵子(natural food cooking)

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