【おはなしのキッチン⓭】『パンプキン! 模擬原爆の夏』平沼純 2023年7・8月

【おはなしのキッチン⓭】『パンプキン! 模擬原爆の夏』平沼純 2023年7・8月

 「平和とは、《長崎ちゃんぽんのような世界》のこと!」
 これは、『若おかみは小学生!』シリーズで有名な令丈ヒロ子さんによる『パンプキン! 模擬原爆の夏』という本に出てくる言葉です。
 この本は、終戦間近の日本各地に落とされた「パンプキン爆弾」の存在を知った大阪の小学生たちが、戦時中の知られざる歴史的事実をつきとめようとする姿を描いた物語です。
 パンプキン爆弾とは、第二次世界大戦中にアメリカ軍が開発した「模擬原爆」のことで、長崎に投下された原子爆弾「ファットマン」の練習用として使用されました。練習用とはいえ破壊力はかなりのもので、大阪、京都、愛知、新潟、東京など全国各地に投下され、推定で400名以上の死者、1200名以上の負傷者が出ています。
 毎月私がオンラインで開催している連続イベント「旅する読書」でも、去年と一昨年の夏の回でこの話題を現地の写真とともに取り上げ、「知らなかった」「もっと知りたい」と大きな反響がありました。
 自分が住む町にパンプキン爆弾が落とされていたことを知って衝撃を受けた主人公のヒロカは、戦争のことを調べていくにつれてどんどん混乱していきます。
 原爆を落としたアメリカが悪いのか? アジアの国々を侵略しようとした日本が悪いのか? いや、そもそも「いい」と「悪い」を単純に決められるのか? 人類の争いはなぜ起こるのか? どうやったら戦争がない世界をつくれるのか……?
 決して一つの「絶対的な答え」が出ない、戦争にまつわるさまざまな問題――。それでも、混乱を恐れずに時間をかけて粘り強く考えていく大切さ、まずは「知ること」から始める大切さを教えてくれる物語。いまだに世界中で戦争や紛争が続いている今年の夏、ぜひ一人でも多くの方にひも解いていただきたい一冊です。
 そして、この物語のなかで「平和の象徴」として描かれている食べものが、長崎県のご当地ラーメン、長崎ちゃんぽんなのです。諸説ありますが、もとは明治時代の長崎で、中国人留学生のために安くて栄養価の高い食べ物を、と作られたのが始まりとされるちゃんぽん。中華鍋一つで作れるとにかく具だくさんの麺料理ということで、いまでは全国区となっています。

 「むかしから長崎にはいろんな国の人が住んではったんや。戦争前の長崎は、言葉の通じない知らない国の人どうしでもあいさつして、よその国の神様がまつってあるところにも、ちゃんとあいさつして……。そういう、ちがう国どうしの文化や習慣や信じるものを尊重しあう、エエとこやったって聞いたんや。(中略) この長崎ちゃんぽんみたいに、肉も魚介も野菜も、いろんな材料がまじりあって、うまいひとつの味をみんなで作り上げる。そんな世界になったらエエなあ。初めてこの料理を食べさせてもろたとき、そう思ったんや。」

(令丈 ヒロ子 作・宮尾 和孝 絵『パンプキン! 模擬原爆の夏』講談社より)

 ヒロカのおじいちゃんが、得意の長崎ちゃんぽんを作りながらつぶやくこの台詞はとても印象的。「平和」というものがどういう状態なのかという問いにも、人によってさまざまな答えがありますが、この夏はぜひおうちでもオリジナルのちゃんぽんを作ってみて、「本当の平和」「本当の幸福」に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

スクールFC 平沼 純

 

令丈 ヒロ子 作
宮尾 和孝 絵
(講談社)

【レシピ】 パンプキン・ちゃんぽん(2人分)

 

冷凍シーフードミックス…100g
豚肉…………60g
カニカマ……3本
玉ねぎ………1/4個
小松菜………1株
白菜…………1枚
干し椎茸……1枚
もやし………1/2袋
中華顆粒だし……小さじ2
みりん……………小さじ2
醤油………………大さじ1
塩…………………小さじ1/4
胡椒………………少々
ごま油……………少々
中華麺……………2玉

①豚肉は2~3cm幅に切る。カニカマは1cm幅に切る。
②水で戻した干し椎茸は薄切りに、玉ねぎは薄めのくし切り、小松菜と白菜は3~4cm幅に切る。もやしは洗ってざるにあげ、水気を切っておく。
③鍋にごま油少々を熱し、①と②の玉ねぎをさっと炒める。小松菜と白菜、干し椎茸、シーフードミックスを加えてさっと炒めたら、水600㏄を注ぐ。沸騰したら調味料を加えひと煮たちさせ、最後にもやしを加えて1分加熱し火を止める。
④中華麺を茹でて丼に入れ、上からたっぷりと③をのせる。

【レシピ・写真提供】
料理家 江口 恵子(natural food cooking)

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