【花まるリビング⑰】『親としてのPDCAを、淡々と、楽しく、続ける』勝谷里美 2022年10月

【花まるリビング⑰】『親としてのPDCAを、淡々と、楽しく、続ける』勝谷里美 2022年10月

 少し前ですが、『ミステリと言う勿れ』というドラマが 放送されていました。原作の漫画も楽しんでいたのですが、そのなかの一場面でとても心に残る部分がありました。主人公がディベートについて語る場面で、「誰かがあなたの意見を否定したとしても、それはあなた自身を否定することにはならない」といった趣旨のセリフ。この考え方は、子育てにも転用できるのではないでしょうか。

 子育てに正解はない、とはよく聞きます。じゃあ何を基準に子どもに接するかと考えると、自分自身の経験は大きい。「私自身が自分の親にしてもらってよかったと思っていること」や、「私自身が“これは絶対に大切”と思うもの!」が基準になってきます。
 そこで難しいのが、「それがわが子にベストマッチするとは限らない」という点です。子どもは自分とは別の人間なので、興味関心も、考え方も、愛情の受け取り方もちがう。なのに「私がよかったと思うこと」や「私が大切だと思うこと」を、子どもから否定される(反抗される)と、「私自身が否定されてしまった!」と感じてしまい、かーっと怒って上から押さえつけてしまったり、だめな親だな、と落ち込んでしまったり…。私のなかに、そんな心の動きがあることに気づきました。

 でも、そうじゃない。ただただ、方法がマッチングしなかっただけ。私の声かけや提案に反抗されたからといって、私自身が否定されたわけではない。否定されたのはその声かけや提案の部分だけだ。人と人なんだからぶつかることもあるだろう、ぐらい大きく構えていいのかもしれません。

 親と子ども。人としてのちがいもあれば、時代のちがいも大きくあるでしょう。たとえば、YouTube。昔はそもそも存在しなかったけれど、いまは、あって当たり前の時代。なのに「見ないようにする」や、「約束の時間が来たらすんなりとやめる」って、「なかなか大変なことに挑戦しているんだな、この時代の子どもたち…」と思うと、いまの時代の子どもたちは、親の自分が立ち向かう必要のなかった困難に立ち向かっている、と言えるでしょう。時代がアップデートしているように、自分のなかにある「子ども」や「教育」像もアップデートし続ける必要がありそうです。

 「いまの時代の子ども像」を冷静にとらえつつ、寄り添えるように努める。ただ、やっぱり、なんでも子どもの意見に合わせすぎてしまうのもちがいます。どうしてもこれは譲れない、という子育ての軸は、家庭で持っておく。ただ、その軸が、自分が子どものときはこうだったから、という判断基準ではなく、家庭で話し合い、いま何を大切にすべきかという点を、欲張りすぎずに設定する必要があるのでしょう。

 「反抗期は次の成長の準備をするとき」(『子どもへのまなざし』著:佐々木正美)といいますが、子どもに反抗されると、やっぱり、親の心は揺らいでしまう。だけどそれは、私自身が否定されているわけではなく、やり方がちがっていただけだ。
 反抗“期”なので、やり方を変えたところで反抗は続くかもしれない。
 けれど、反抗されたことを事実として受け止める→子どもを観察して、「もっといい方法はないかな?」「次は何を試してみようかな?」と、PDCAを淡々と回していく。それは親である自分自身を成長させていくためのプロセス。must感からではなく、楽しみながら。子どもに期待するのではなく、親としての自分の成長を楽しみに、PDCAを回していけたらよいな、そんなふうに思いました。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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