低学年コースの書き写し教材、「あさがお」。教室では、あさがおの時間に毎回、「あさがお大賞」を発表しています。正しい姿勢・正しい鉛筆の持ち方で、テキパキと読みやすい字を書けていることが、あさがお大賞に選ばれる秘訣です。
その日、1年生チームであさがお大賞に選ばれたのはKくん。素晴らしい姿勢や鉛筆の持ち方に加えて、ハッキリ大きく、濃い字を書けたことが、選ばれた理由でした。その日はいつもの表彰に加えて、みんなであさがおの字を見せ合う時間をとりました。子どもたちは普段なかなか見ない、お互いの字に興味津々です。「へー…」と、自分のあさがおと仲間のあさがおを、交互に見比べていました。あさがお大賞のKくんの字をのぞきこんだYくん。「たしかに字がハッキリしてる…」そうつぶやくや否や、自分の席に戻り、鉛筆を右手で強く握り、あさがおの続きを書き始めたのです!もう鉛筆が折れてしまうのではないか、というぐらいの力強さ。「自分もKくんのような字を書きたい!」と刺激を受け、自分に取り入れようとするYくんの強い意志が伝わってきました。ほかの子から得たものを吸収していくことができるYくんの成長が楽しみです。
小学校時代の私は、何をやっても続きませんでした。運動神経がよくない自分がコンプレックスで、プールやテニスを始めてみましたが、どれも長続きしませんでした。できない自分、上達しない自分と向き合うことができなかったのです。いつも逃げていました。そんな私を変えてくれたのは、進学先の中学校で出会った同級生たちです。何部に入りたいかを話していた、とある放課後。みんなピアノやバレエ、バスケをずっと何年も続けていることを知ります。それぞれ「特技」「夢中になっていること」をもっていたのです。一方、何もやり遂げていない自分には、自分を語れるものや自分の世界が何もない。子どもながらに衝撃を受けました。そこで私は決心をします。「絶対に6年間、同じ部活を続ける。逃げない」。
選んだのは、剣道部でした。袴姿がかっこいい、運動ができる自分になりたい、そんな単純な理由で入部した剣道部でしたが、高校を卒業するまで6年間続けました。決して順風満帆な6年間ではありませんでしたが、引退したときは、初めて一つのことをやり遂げた達成感でいっぱいだったのを、いまでも覚えています。そこで一度剣道は終わりにするつもりでした。それ以上やっても上達する見込みはなかったのと、やり切った、という満足感でいっぱいだったからです。ところが、大学に入学した春。やっぱり剣道が懐かしくなって、試しに大学の剣道部を見学しに行きました。そこで出会った先輩たちの強さに驚きます。また、中には4歳ぐらいからずっと剣道を続けている人がいることも知りました。6年で満足した自分がちっぽけに感じました。「もう少しやってみようかな」。結局、大学を卒業するまで10年間、剣道を続けたのです。飽き性だった小学生の自分が知ったらきっと驚くことでしょう。お世辞にも強いとは言えませんが、一つのことを続けられたことは、いまでも自分を支える大きな自信になっています。
友達や仲間から受ける刺激には、大いなるパワーを感じます。あさがおの字を比べ合っていた子どもたちもそんな思いだったのではないでしょうか。
縁があって、花まる学習会の同じ地域、同じ曜日の教室に集まった子どもたち。その子どもたちが互いに刺激し合い、ともに成長するお手伝いができれば、と思っております。
余談ですが、先日、3年生のYくんが作文に剣道の試合の話を書いていました。剣道トークで盛り上がります。「先生もずっと剣道やっていたんだ。懐かしいな」「先生もおいでよ。僕の道場、大人もいるよ」思いがけないお誘いを受けてしまいました。 久しぶりに防具を取り出してみよう。そんなことを考えている今日この頃です。
花まる学習会 高津奈都子(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。