私は山形県出身、コンビニひとつない田舎で生まれ育ちました。まわりは田んぼや畑、川に囲まれた自然豊かな町です。高校は、片道1時間かかるところに通いました。毎朝5時に起床し夜の9時半に帰宅する生活を、3年間続けました。
高校では、格闘技漫画と友人に影響されてボクシング部に入部しました。入部当初は戦うことが怖く、試合でも負け続きでした。そんな不甲斐ない姿を両親に見せることが苦痛でした。また、同期が試合に勝利し、次の大会へと進んでいく姿を見て劣等感を抱いていました。私はまわりから「冷静だね」と言われることが多いのですが、実はそうではありません。負けず嫌いで、試合に負けるたびに涙を流していました。この負けず嫌いな性格とボクシングがマッチし、当時のコーチからの一言で、高校2年生の秋から私の”大逆襲”が始まりました。
そのコーチからの一言とは、「お前はもう優勝できるぞ」でした。たった一言ですが、これまでの努力を見てくれていた人がいる、そう思えたことで、恐怖や劣等感が自信に変わりました。すると県の新人大会で、私は見事に優勝することができました。優勝したことはもちろん嬉しかったのですが、それよりも、やっと両親にいい姿を見せることができたことや両親が私の優勝に泣いてくれたことのほうが嬉しかったです。県新人大会で優勝したことをきっかけに、3年生の最後の県総体でも優勝することができ、インターハイへの切符をつかむことができました。さらに、インターハイで勝利する姿も両親に見せることができました。これまでの努力は無駄ではなかったと感じた瞬間です。両親には少しだけ恩返しすることができたのかなと思いました。
信頼できる人からの言葉には、パワーがあります。そのパワーは、言葉をかけた人からすれば、たいしたことはないかもしれません。しかし、それは受け取る人の自信や、やる気につながります。スポーツだけでなく、勉強においても同じです。信頼できる人からの声かけが、子どもたちにとって大きな力になります。私自身もそんな影響力を持てるよう、日々精進してまいります。
花まる学習会 菊地健斗(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。