「先生、おなかすいたでしょ?すぐ作るからまっててね!」
手先を器用に使いながら折り紙をいじっているのは、花まるの体験授業に来た1年生のMくん。体験授業が終わったのは17時でした。
「授業をがんばったからおなかがすいちゃったぁ」
と話していたMくんの話に同意したところ、
「ママ、あれ出して!」
とお母さんから折り紙セットを受け取り、何かを作り始めました。
「先生はチーズ食べられる?苦手な野菜はあるのかな?」
そう質問してきた Mくんに対して、チーズが苦手なので
「ピザとかハンバーガーになっていたら食べられるかな」
と答えると、
「そうか…。わかった、よし!たまごは食べられるかな?あれにしよう!」
折り紙セットから黄色、茶色、黒、緑、オレンジ、白の折り紙を取り出しました。
黄色の折り紙は端っこを少し折っただけですが、茶色の折り紙は手でくしゃくしゃにしたあと、丸い形に作り直していました。白い折り紙の真ん中にはもう1枚出した黄色い折り紙を丸くしたものをセロハンテープでくっつけています。
「黒ゴマは体にいいんだよ!食べようね!」
黒い折り紙は細かくちぎられてオレンジ色の折り紙の上に貼られていきます。
「上はふっくら、下はちょっと硬くしよう!」
オレンジ色の折り紙がどんどん形を変えていきます。
「よし!できたよ!ハンバーガー!」
Mくんの手のなかには、卵がサンドされたハンバーガーができ上がっていました。
「でもハンバーガーだけじゃ栄養が足りないよね!ビタミンもとろうか」
赤と緑の折り紙を取り出したMくん。
「何を作るでしょうか!」
と質問され、
「ハバネロ?唐辛子?」
と答えると
「はぁ~。わかってないなぁ」
あきれられてしまいました。
「これだよ、これ!甘くて酸っぱいやつ!なぁーんだ!」
Mくんの手にはイチゴが握られていました。
「イチゴには種があるよね」
鉛筆で種を表現することで、よりリアルなイチゴができました。
「風邪が流行っているからお肉だけじゃなく、果物もとろうね」
Mくんがだんだんとお母さんに見えてきました。
「そうだ!これだけじゃ先生は足りないよね!ちょっとまって!」
取り出したのは、赤と黄色の折り紙です。
「テレレ♪テレレ♪テレレ♪」
音楽を奏で始めるMくん。
「よし、できた!ごいっしょに!ポテトはいかがですか?」
見覚えのあるマークが書かれた赤いケースのなかに、ほっそりとしたポテトが入っています。Mくんの手のうえには、ハンバーガーのセットが完成していました。
わずか10分ほどの出来事。ファストフードもびっくりです。おしゃべりをしながらたくさん手を動かし、あっという間に頭に思い描いたものを作り上げました。
「あー楽しかった!しまった!パンはもっと折り方を変えたらふっくらさせることができたのに!よし、うちで新しく作ろうっと!ママ!何しているの?早く帰ろう!ぼくがハンバーガー作ってあげるから!研究したいから帰りにマックに寄ろう!」
作品を完成させたと思ったら、次の改善点を考え始める。もはやプロの領域です。
「この子、家でもそうなんですよ。熱中すると止まらないんです」
笑顔でMくんの普段の様子を教えてくれるお母さん。
好きこそものの上手なれ。好きなことに没頭し、全力をささげることができるのが子どもたちのいいところですね。
花まる学習会 村田寛典(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。