「好きなものしか」
「たべものをいろでわけたよ!○にカタカナをいれて、ことばをつくろう!」というカタカナゾペー(1年生向けのカタカナ学習教材)の問題。1年生女子Aの解答がこちらである。
アマル?インゴ?アモン?キャメリ?聞いたことのない食べ物がたくさん。このわけをお父さまから聞くことができた。
「トマト、イチゴが嫌いで食べないんですよね。レモンもすっぱいから嫌いで、全部頭にないのかもしれないですね~」
なるほど。ただ、これほどまでにもシャットアウトすることがあるのだろうか…。書けている食べ物は好きで、彼女は認識をしているとのことだった。
また、1年生男子Bは恐竜が大好き。思い出せないカタカナがあると、
「ユ、ユ、ユ…。あ、ユタラプトルのユだ!」
と言って思い出すという。
野球が大好きな4年生男子Cはプロ野球の選手名鑑を見て、自然と漢字を覚えているらしい。(私もずっと野球をやっていて、選手名鑑が好きでよく眺めていた。笑)
この時期に大切なことの1つは、好きにつながる“きっかけ”が多くあるかどうか。きっかけが多いことで、“好き”が増えるチャンスがある。さまざまなものに触れる機会がたくさんあるといいなと思う。そして、2つ目は好きなことを“追求”し続けることができる環境があるか。“好き”となれば、主体的にいくらでも考えを深めていく。“好き”というゾーンに入ったら、子どもたちの思考は止まらない。あることにのめりこんでいたら、そっと見守ることも必要なのだと、子どもたちを見ていて感じる。
「心を鍛える特別授業」
小学生は年に3回、特別授業でHIT(Hanamaru Intelligence Test)と花まる漢字テストを行う。HITとは、普段、授業や宿題で行っている学習内容のテストである。今月実施したHITが人生初のテストだという1年生もいたので、HITが始まる前に、大切なことを伝えた。それは
「誰のためのHITなのか」
を考えること。それは紛れもなく、「自分のため」。誰かのためにやるものではない。他の人と比較するものでもない。
「自分と勝負し続けること」
「真剣に向き合うこと」
「あきらめないでチャレンジすること」
の3つを伝えて、スタートした。
初めてのテストだった子は特に不安があっただろう。それでも子どもたちは、HITの雰囲気にのまれることなく、真剣に向き合った。「わからない~」「ヒントほしい~」と助けを求めたい気持ちを押し殺し、その日はヒントをほしがらず、自分で考え、自分で答えを導き出していた。子どもたちの順応性はすごい。
授業も終盤にさしかかり、最後に行ったのは「花まる漢字テスト」だった。花まる漢字テストは、合格・不合格と結果が出るとともに、合格すると賞状がもらえる。この漢字テストに向けて、1か月間、家で漢字練習に励んだ子も少なくはなかった。
漢字テストが始まる前、
「わ~」「緊張する」「どうかな~」
など、子どもたちから声がもれた。胸を押さえながら、ドキドキしている様子がものすごく伝わってくる。ただ、緊張する、ドキドキするということは、HIT当日まで頑張ってきたからだろう。すべての力を出し切れるのだろうか、多くの点数がとれるだろうか。
この不安に押しつぶされそうでも、子どもたちは最後まで集中して考え抜いた。その結果、すべて書ききって爽快感にあふれる子もいれば、思い出せずに悔しい表情を浮かべる子もいた。それでもこの時間は、誰もが精いっぱい自分と向き合ったのだった。
この緊張するなかで自分の力を出し切った子どもたちは、少しだけでもたくましくなったと思う。よくある“テスト”で終わらせるのではなく、精神的な成長を促せるのがこの特別授業。この時間を過ごすことで心が鍛えられていることを、今後も子どもたちに伝えていきたい。
花まる学習会 小島健(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。