【花まるコラム】『おもしろいを突き詰める』溝部祥子

【花まるコラム】『おもしろいを突き詰める』溝部祥子

 低学年コースの子どもたちが「なぞぺー」や「レインボータイム」を終えたあとには、「自分で問題をつくっていいよ」と促しています。というのも、相手を楽しませる力を伸ばしたいと考えているからです。いまでは、「よっしゃー!」と楽しそうに取り組む子どもたちの姿が見られ、自分から「先生、問題つくってもいい?」という声もあがるようになりました。しかし、初めからそういうわけではありませんでした。やはり、初めて取り組むことに対して躊躇してしまう姿があります。繰り返しつくり続けることで、どうしたらおもしろくなるかな?と模索する姿が見られるようになりました。

 初めて問題をつくるとき、「どうやって問題をつくるの?」と質問をする子がいました。子どもたちは、なぞぺーやレインボータイムでたくさん問題を解いていますが、自分がつくる側になるのは初めて。このような質問が出てくることは当たり前のことです。そこで、「自分がおもしろいと思うものをつくったらいいよ。なぞぺーをまねしてつくるのもオッケー」と声を掛けました。すると、「わかった!」と必死になってなぞぺーの問題をペラペラと見返しています。自分が過去に解いた問題の中から、これだ!というものを見つけようとしていました。

 問題をつくっている様子を見ていると、最初はなぞぺーのルールをそのままに問題をつくっているようでした。参考にしていたのは、盾迷路。盾を持っている数だけ、剣が出ているところを通れるといったルールです。自分で持ち盾の数を設定して、どこに剣を置くのかを考えながらその迷路を作成している姿がありました。このように、決まったルールを駆使するだけでも十分おもしろいのですが、このおもしろさを超えてくる問題をつくった子がいました。

 レインボータイムの問題に「億万長者迷路」という迷路があります。最短距離でなるべく多くのお金を拾ってゴールする、という迷路です。しかし、その子はこのルールを「遠回りしてもいいけどなるべく多くのお金を拾ってゴールする。ただし〇個しかお金を拾えない」に変更していました。できあがった問題を、つくった子を含め同じテーブルに座っている3人の子どもたちと解いていたのですが、これがまた盛り上がりました。同じような問題でもルールが違えば、新しい問題の感覚です。「えー!これだけしか通れないの?どうやっていこう?」と目で追いながら迷路をしていました。ルールをつくった子は、楽しんでいる様子を嬉しそうに眺めていました。

 この、「自分でルールをつくる」というところにおもしろさがあるのではないでしょうか。自分がつくったものを誰かに解いてもらうということで、相手を楽しませることができます。自分でルールをつくることで「よりよくするために」「相手をもっと楽しませるために」というさまざまな思考を巡らせるきっかけになると考えています。

 見渡してみれば、自分を楽しませてくれるものはたくさんあります。ゲームやテレビ、YouTubeもそうです。「娯楽で消費する」ではなく、「娯楽を生み出す」ことができる、そんな技術を身につけてほしいと感じています。なぜなら、つくったもので人を楽しませることのできる力が魅力につながるからです。人はおもしろいもの、いいなと思ったものを見つけると、誰かにシェアしたい気持ちになります。それがどんどん広がっていくことで、周りに人が集まるようになります。

 0からつくりあげて楽しむということは、なかなか難しいことのように感じています。初めからいきなり大きなものをつくろう!と意気込んでも簡単につくれるものではありません。だからこそ、身近なところからつくる感覚を身につけてほしいと考えています。まず、第一歩としてなぞぺーの問題づくりを提案しています。ここで培った経験が、この先、新しいものを生み出す土台の力になると同時に、よりよく進化していく力も伸ばすことができるだろうと感じています。「おもしろいを突き詰める」子どもたちには、この探求心を持ち続けてほしいです。

花まる学習会 溝部祥子(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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