初めての“できた”
年中授業が終わり、子どもたちがみんな、お父さん・お母さんにかけよる。
「見て!初めてできたよ!」
毎授業で行っている思考実験。その日のテーマは「紐」を結ぶことで、「集中力」「手先の器用さ」「試行錯誤力」「空間認識力」など、さまざまな力が育まれる。
紐を結ぶことが初めてだった子も数人いて、最初苦戦する子もいた。私たち講師が少し手伝いながら、どうやったら結べるか自身で考え、子どもたちは一生懸命、試行錯誤をしていった。
「できたー!」
初めて結び目ができたときの子どもたちの表情は一際輝いていた。そして、そのとき感じた達成感。その感動を授業後すぐに伝えたかったのである。
これからも、やったことがないこと、初めて挑戦することがたくさんある。今後も初めての“できた”を花まるでたくさん経験していってほしい。その感動体験が自信に変わっていく。
悔しさを感じられた
「毎日が楽しければよい!」と幸せに過ごす2年生のAちゃん。幼児期の特性そのもので振り返りはせず、常に前を向いて生きている。
そんな彼女が10月のHIT(Hanamaru Intelligence Test)後、変化を見せた。HIT当日の帰り道、落ち込んでいるAちゃん。お母さんが理由を聞くと、彼女はこう答えた。
「漢字を2個書けなかったから悔しかった。次は100点をとりたい!」
いままでであれば、その日のことを振り返ることはなかったとお母さんは言っていたが、今回は違った。できなかったことを悔しがり、それを次につなげようとしている。そんな言葉を聞けて、お母さんは成長を感じたという。
“何を”“どのように”感じるか、それは子どもたちそれぞれのタイミングで変わる。そのときは何かを感じなかったとしても、必ず自分で何かを感じるときがくる。待つのが大変なのだが…信じて待つことが大切である。
“しこう”し続けられるおもしろさ
通常の花まるクラスでもそうだが、アルゴクラブ(あそびのなかで算数脳を鍛える数理教室)でも“しこう”し続けられる問題をたくさん扱っている。“しこう”には“思考”と“試行”の2つの意味がある。
その日は、マジカルスティック(マッチ棒パズルのようなもの)の問題に取り組んだ。マジカルスティック10本でできた、小さな正方形が「L」の字に3つ並んだ形。そこにマジカルスティックを足して正方形の数を変えていくという問題。
2本足すのであれば、「田んぼの田」のような形ができる(一辺が2本の正方形が1つと小さな正方形が4つ)。2本をクリアしたら3本足して、4本足して…と取り組んでいく。
子どもたちは一切手を動かすことをやめず試し続ける。うまく作れたら、「できた!」ととても嬉しそう。「次はこれをやっていい?」と自分から次のレベルに取り組む。また、「3本だったら“これも”できそうだよ!」と自ら別解を見つける。頭で考え手を動かして、試して考え続ける。
やらされている気持ちはまったくなく、良質な“しこう”する時間を過ごしているな、と子どもたちを見て感じた。これが学習の土台となっていく。
花まる学習会 小島健(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。