【花まるコラム】『ヒーロー誕生!』有森萌葉

【花まるコラム】『ヒーロー誕生!』有森萌葉

 今年度も半分が過ぎ、子どもたちのできるようになったことも増えました。ちょっとしたしぐさ、行動から子どもたちの成長が垣間見えます。5月頃まではセロハンテープを上手く扱えなかった年中の子どもたちが、いつのまにか自分たちでテープカッターを使えるようになったことも成長の一つです。

 とある年中クラスの授業前。子どもたちはいつも通り授業の準備に取りかかっている真っ最中です。Mちゃんの筆箱のなかには、以前に拾ってきたどんぐりが大切に保管されています。いつもはこの大切などんぐりが顔を出すことはありません。しかし、その日は違いました。Mちゃんは筆箱からどんぐりを取り出し、おもむろに床に置きました。その瞬間、バキッ! 片足でどんぐりを勢いよく踏み潰したのです。

 Mちゃんはどんぐりが嫌いになってしまったのでしょうか?その答えはノーです。子どもというのは急に何かを思い立って行動に移します。Mちゃんの場合は、「どんぐりのなかはどうなっているのか」という興味からその行動に出ました。なかからは、木の実のようなものが出てきました。その木の実がきれいに真っ二つに割れています。その割れた小さな木の実のなかに薄黄色の丸長いものが。まじまじと観察していると、その黄色い物体がモゾっと動いたのです。小さな小さな幼虫でした。Mちゃんはびっくり仰天「いやー!」。 自分が大切にしていたどんぐりから虫が出てくるなんて思ってもいなかったでしょう。Mちゃんは驚きと恐怖のあまり動けなくなってしまいました。そんなとき、隣で見ていたAくんがさっと虫の入ったどんぐりを素手で拾い、ゴミ箱にポイッ。 生きものが大好き Aくんはこの虫も平気だったようで、まったく動じずにやってのけました。困っているMちゃんに手を差し伸べたAくんはまさに救世主。MちゃんのAくんを見る眼差しはキラキラと光っていました。ここに小さなヒーローが誕生です!    

 最近のAくんは、壁に突き当たっているところでした。何か一つの問題につまずいてしまうとそこから立ち直れず、自分の思ったようにいかないことに悔しい気持ちが大きくなる一方でした。しかし、今回の出来事をきっかけにみんなの注目の的となったAくんは、少しその壁から脱却できたように見えました。そしてAくんはこのことをおうちで照れ隠しをしつつ、嬉しそうに話していたそうです。活躍できたことを実感できたのだと思います。花まるでは、勉強に限らず、たくさんの成功体験を積み重ね、子どもたちの自己肯定感を育んでまいります。子どもたちに起こる出来事は、たとえどんな小さなことでも大冒険なのです。

 それは、高学年以降も同様です。ある教室の大会でのこと、6年生のKくんはいつもこんなことを聞いてきます。「Y先輩は今日来るの?」。Yくんは、2年前に花まるを卒業した男の子。Kくんが4年生の頃、厳しくそして時に優しく接してくれたのがYくんでした。Kくんにとって憧れの存在だったのです。Kくんにとって6年生になったいまでもYくんがヒーローなのです。異学年交流ができる花まるだからこそ、こういった関係も築いていくことができるのです。

 私たちは日々、子どもたちをサポートしていますが、子ども同士でも助け合いが自然とできる場を提供してまいります。 

花まる学習会 有森萌葉(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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