【花まる教室長コラム】『子どもの目線の先』佐々木汐莉

【花まる教室長コラム】『子どもの目線の先』佐々木汐莉

 息子がようやく2歳7か月になります。そんな息子は電車が大好きで、その姿を見ると指をさして喜びます。電車図鑑を持ってきて、「これ読んで!」と言ってくるのも毎日の恒例です。 図鑑を見ながら電車の名前を読み上げると、私の顔を見上げて、くしゃっと笑います。「子どもって自分の好きなものを一緒に共感してくれる大人に安心するものだなぁ」と感じる瞬間です。

 数年前、採用面接で出会った学生の言葉が印象的でした。「親御さんとの思い出を教えてください」と質問したときのことです。「大学受験のとき、経済的に厳しかったのもあり、国公立を受験するようにずっと言われていました。自分なりに頑張ったのですが、落ちてしまい…。かなりショックを受けたと同時に、私立を一つも見ていなかったので、頭が真っ白になりました。そんなときに親も動揺していて。後先のことを考えていろいろ言われたのですが、そのときに自分のショックな気持ちにただ共感したり、そこまでの頑張りに声をかけたりしてほしかったなというのがいまでも残っています」
 きっと親御さんとしては、わが子を愛するがゆえに、わが子が困らないようにという一心だったのでしょう。子どもを想っての咄嗟の言動、しかし彼女が欲しい声かけとギャップがあった…この事実に胸が苦しくなりました。いくつになっても、「子どもは自分が見ている景色を一緒に見てほしい、共感してほしい」という気持ちをまず持つものなのだな、と考えさせられました。
 いままでの経験をもとに子どもについアドバイスをしすぎてしまったり、先回りしすぎてしまったり…。車の運転にたとえると、自分とわが子は違う車を運転していて、車の種類も特徴も向かう先も本当は違うのに、その子どもの車のハンドルを握り、こちらで操縦しようとしてしまう瞬間がある…。わが子がうまくいくように、失敗しないように…。もちろん、それで失敗を回避することもあるでしょう。でも、回避したと思ったその道はその子にとっての失敗になるかもわからない。むしろ、新しい気づきや出会いがあるかもしれない。そして、失敗ということは本当はなく、すべては彼らにとって学びにつながるものなのかなとも感じています。
  息子が1歳のとき、雨上がりの水たまりに、思い切り足を踏み入れようとしたことがありました。「濡れてしまう、そうしたら風邪をひいてしまう…!」そう思った途端、止めようとした自分を自覚しました。しかし、次の瞬間、「この子は水たまりに入ったら濡れて冷たいということすら知らないのか」とハッとし、その手を放してみることにしました。息子は「キャッキャッ」と水たまりを堪能し、靴もズボンもびしょびしょになって満足げでした。
「水たまりおもしろいね」「水がたくさん飛び跳ねるね」
 子どもの目線で世界を一緒に見ると、子どもの頃を思い出し、世界に再発見がありました。
 雨が降ると水でよく遊んだな~。傘を逆さにして遊んだり、水たまりに石を投げたり。いつから雨が憂鬱なものになっていたのだろう…。子どもの世界でものごとを見ることが世界の豊かさを思い出させてくれるようです。帰り道はびしょびしょの洋服にニコニコ笑顔の息子の後ろ姿がありました。

 話は変わり、先日社員間で「自分の母親はどんな母親だったか」を話し合う場面がありました。ある男性社員の「自分のお母さんは、自分の目先の興味にいつも関心を寄せてくれていたのが嬉しかった」という話が印象的でした。思春期で親子の会話が少なくなったときにも、「あんた、いま演劇にハマっているのね。どんなところがおもしろいの?」といつも心の内を聞いてくれたそうです。
 子どもは自分とは違う一人の人間。その前提に立ち、いまどんなふうに世界を見ているのか知ろうとする。それは一人の個人として相手を尊重し、その子自身が感じている世界を大事にする姿勢そのもの。それを子どもは敏感に感じ取るものなのだと思います。
 目の前の子どもが今どんな景色で世界を見ているか。
それを楽しみながら、新たな世界を発見するように子どもと人生を伴走したい。そう感じた今日この頃でした。

花まる学習会 佐々木汐莉(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員のみなさまにお渡ししています。

花まるコラムカテゴリの最新記事