高学年の宿題の1つに「言葉ノート」があります。高校生、大学生になっても役立つ学習の一環として、「必ずこの意味に触れてほしい」という目的で国語のテキストに出てくる指定語句や低学年のときに読み上げていた四字熟語、また自分がわからない言葉を調べ、ノートにまとめていきます。わからない言葉があったとき、立ち止まって考えられる人になってほしいという願いがあります。
調べる語句は、国語のテキストから10個指定されていることが多いのですが、ときに自由語句10個の週もあります。以前は、自由語句は自分で言葉を探すとしていたのですが、ある年の夏休み前、5年生の女の子から相談がありました。それは、「言葉調べって、何個出ますか?」でした。詳しく聞いてみると、「言葉を探すのが大変だと思うことがある……」とのこと。そこで、「もし、自由語句に『学校にあるもの』や『植物』といったテーマがあったら、どうかな?」と聞いてみると、「それならがんばれそう!」という言葉と笑顔が返ってきました。そして、「こうやってみるよ」とほかの子どもたちにも伝えたところ、「多いなと思ったけれども、がんばってみる!」「おもしろそう」という声が上がります。その後、子どもたちの言葉ノートへの取り組みが変わりました。その年の国語大会では、意味を聞いてその言葉は何かを答えるゲームがありました。子どもたちのノートを借りて何問か出したとき、「○○さんの問題!」「自分のものが選ばれた」とより親しみを持ってゲームに取り組めたことを思い出しました。
「何でもいい」から「選択の幅をせばめる」と、子どもたちがより取り組みやすくなることがある、ということを知りました。その後、テーマはいろいろ出しました。最初は「動物」や「果物」といった見つけやすいものを中心に、少しずつ範囲を広げて「白いもの」「長いもの」「ふわふわしているもの」などを出しました。時々どんな言葉を調べてきたかの発表会をすると、「こういうものもあったのか!」「同じ言葉でも辞書によって意味の書き方が違うこともある」という新たな発見をする場になりました。
冬休みに少し考えてもらおうと「2つで1 組のもの」というテーマを出したことがあります。子どもたちから「これが一番(言葉を見つけるのが)大変だった!」という声が最も多かったもの。頭を悩ませつつ、この季節だからこそ、「スキー」「手袋」といった言葉を調べている子もいました。
3月、新年度に向けて「アイデア募集!」と子どもたちに聞いてみました。子どもたちが「こういうテーマを調べてみたい」「こういうテーマだったら調べてみようと思う」と考えるものはどういったものなのだろうというのを知りたい。そして、「自分の考えたものが選ばれた/選ばれるかも」となったら、言葉ノートに対しての意欲もさらに変わってくるのだろうな……と考えたのです。「え、考えていいの?」と少し驚きながらも、鉛筆を走らせる子、「何にしようかな」と身近なものを思い浮かべる子、卒業する6年生も「後輩たちへ」と自分が調べることはないけれども、一生懸命考え、書いていました。実現可能なものと、そうではないものがありましたが、予想以上のテーマが出てきました。国語辞典に載っているかどうかもふまえ、そのまま出せそう、少しアレンジをすれば出せそうといったものがいくつもありました。夏休みの頃には、子どもたちの考えたテーマが一部出てくる予定です。
授業のなかでも、子どものふとした発言から「これいいね!」というものが出てきたとき、それを採用することがあります。それが子どもたちのためになる、よりよくできると思ったときには、柔軟に受け入れたいと考えています。これからも、「アイデア」は子どもたちの発言からたくさん見つけていきたいと思います。
花まる学習会 田邊紘子(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。