こちらのコラムで本の紹介をするようになり、「毎晩、読み聞かせしているんですか?すごいですね!」と何人かからお声がけいただきました。私自身、本が好きなこともあり、本の読み聞かせはそれほど苦ではないのですが、実態をお話しすると、「真心こめて丁寧に読み聞かせをしている」と、胸を張って言えるものではありません。あまりに眠いときは、本を読みながら転寝してしまい、「起きてー!」と子どもに肩をゆすぶられる日もあります。今回は、そんな眠気と闘いながらも夜の読み聞かせを楽しめないかといろいろ試行錯誤して習得した技をご紹介します。
ケース①「子どもを寝かせるための本で、親が眠くなる」→飛ばし読み作戦
「おやすみ絵本」―子どもをゆったりと眠りの世界に誘うための本は様々ありますが、わが家の定番は、『おやすみなさいフランシス』です。なかなか眠れないフランシスが、あれやこれやするお話でとてもかわいらしいのですが、私がとっても眠いときは「もう、お願いだから、フランシスもうちの子も、早く寝て…」と懇願するような気持ちになってしまいます。そこで少しでも早く電気を消したいときにやってみたのが、「飛ばし読み作戦」です。絵本の中に出てくる会話文の中で、
「〇〇〇」と、フランシスは、いいました。
「〇〇〇」と、おとうさんは こたえます。
の、赤字の部分など、ここは読み飛ばしても意味が通じるな、という部分は、どんどん飛ばして読んでいくのです。何回か読んだことがある本だから意味は通じるだろうし、2分でも3分でも早く寝てほしい。しばらくはうまくいきました。が、文字が読めるようになってきた娘に「ちゃんと全部読んで! !」と叱られ…。絵を見るだけでなく、文字も追うようになったんだな、という娘の成長の発見とともに、この作戦は終了しました。
ケース②「同じことの繰り返しで、自分が飽きてしまう」→“さくら”作戦
『おむすび7』という本。この本は子どもたちが大好きで、何度もせがまれます。「またこの本か…」という気持ちに私がなってしまったときに使ったのが、「“さくら”作戦」です。
花まる学習会の低学年コースの教材に「さくら」というものがあります。精読力を鍛える読み聞かせ教材で、授業では講師が数ページ、テキストを読み、「はい、そこまで!」とテキストを閉じさせる。読んだところまでの内容をしっかりと覚えているかクイズを出す、という流れで進めます。
その「さくら」方式を取り入れて、読み聞かせをしながら、あるところでぱたっと止めて、そこまでの内容をクイズに出すことにしました。
この方法の良いところは、子どもの精読力を鍛えることができるのはもちろん、親が即興で問題を(選択問題であれば、まぎらわしい選択肢なども)考えなくてはいけないので、自分の頭を回転させる必要があるところです。眠気がとびます…!気持ちを言い換える部分や、難しい語彙の使い方を三択で答えさせる問題などを出すことで、子どもの語彙も増えていくのでおすすめです。
子育てにおいて、寝る前の読み聞かせを絶対にしなくてはいけない、ということもないと思います。あるご家庭では、家で子どもへの読み聞かせはまったくしていなかったが、あるとき急に、子どもが「自分で文字を読めるようになりたい!」と言い出し、絵本を読み始めたそうです。何かを無理にさせるのではなく、“子どもの心が動いたタイミングで”というのが本質だな、と思わされました。
まだ娘が2歳ぐらいだった頃に訪れた児童館で、支援員の方に「読み聞かせをしたいけど、うちの子がどんどん絵本のページをめくってしまって、ちゃんと読めないんです…」という相談をしている方がいました。思わず(ちゃんとした読み聞かせって何だろう…)と考えてしまったことを思い出します。
“ちゃんと”はなくて、その子が絵を楽しみたいなら絵だけを見ればいいし、一か月ぐらい同じ本を読みたければそれでもいいし、読みたくなければ読まなくてもいい。無理強いせず、その瞬間に子どもの心が躍動しているかどうかに焦点をあてることが大切なのでしょう。
本の読み聞かせをするのならば、親も楽しみながら。しんどい日は、ちょっとずつ手を抜きながら。それが、わが家の「読み聞かせ」のスタンスです。それぞれのご家庭で、「読み聞かせ」とのちょうどよい距離感、楽しみ方を見つけてみてください。
花まる学習会 勝谷里美