先日、小学生コースの授業で作文コンテストをおこないました。冒頭に作文のポイントを伝えてから、歴代の大賞に選ばれた作品を子どもたちに読み聞かせました。
『おじいちゃんとラムネのたたかい』というタイトルを読んだ瞬間、子どもたちからは「え~!」「なにそれー!」と声が上がりました。題名だけで笑いが止まらなくなる子もいたほどです。どんな話か気になる、読みたいと思える題名がいいよね、と伝えると実感を持って理解したようでした。
テーマが決まり、勢いよく書きはじめる子がいる一方で、まだ書くことが決まらない子も。そんな子たちには過去の文集を読むことを勧めました。
1年生のYちゃんは、文集を熱心に読んでいました。突然「よっし!」と顔を上げ、持っていた文集を作文用紙の隣に広げて、鉛筆を持ちました。写すのかな? と思い見ていると、クリスマスが好きなことについての作文を見ながら「夏が好き」というテーマで書きはじめました。「学ぶ」の語源は「真似ぶ(まねる)」にあるといいます。本当に良いものに習って似せていくことから学びがはじまるということです。文集と作文用紙を交互に見比べながら懸命に書き進めるYちゃんは、いままさに「学んでいる」のだなと微笑ましく思いました。
3年生のTくんは、去年まで作文の題材選びに苦戦していました。授業内では間に合わず悔し涙を見せることもしばしば。しかし、毎回書き終えて晴れやかな笑顔で作文を持ってくるところを見ると、書くことを楽しむ土台は身についていると感じていました。そんなTくんが「もう書きたいこと決まっているんだ!」と嬉しそうに教室に入ってきたのです。おばあちゃんにオレオレ詐欺の電話がかかってきた、という衝撃的なエピソードを、とっておきの宝物を見せるかのような表情で語るTくん。しかし、いざ書きはじめると、1、2行書いたところで手が止まっていました。声をかけると
「いまね、どうやって書いたらおもしろくなるか考えてるんだ~」
そう言って、にやりと笑いました。自分が書きたいことを書くだけでなく、「読み手」にまで視野を広げられていたことに成長を感じました。
高学年には「哲学すること」を伝えました。何か1つのことに注目して、「なぜだろう」「どうしてそうなったんだろう」と自問自答していくと考えは深まります。過去の文集からいくつか哲学をしている作文を紹介しました。すると「もう書くことが決まっている」と言っていたはずの5年生のNくんが「やっぱりもう少し考える」と言い出しました。悩んだ末、テーマを変えることを決断したNくんが書いたのは「7日間=1週間」というもの。なぜ1週間は7日間なのかということからはじまり、なぜ学校は週に5日間なのか、なぜ学校は5日間あるのに花まるは1日だけなのか。次から次へと湧き起こる疑問を素直に書き連ねた作文でした。粗削りではありましたが、これまで電車、おばあちゃんの家など、自分の好きなことや楽しいことばかりを題材に選んでいたNくんが、初めて哲学してみた瞬間だったと思います。
花まるの授業で書く自由作文。この「自由」という言葉が意外にも子どもたちを惑わせます。不思議なもので、何でも書いていいと言われると、何を書けばいいのかわからなくなるのです。毎日のたくさんの情報のなかから、どこか一つを切り取って書く作文。テーマの選択、伝えたいことを言葉にすること、読み手を意識して推敲すること。そのどれもが一朝一夕では上達しません。繰り返し自分の想いを言葉にする練習が必要です。
子どもたちが大人になったとき、まさに「自由」のなかから自分の道を選択していかなければいけません。自分の考えを持ち、それを人に伝えることがこれまで以上に重要視される時代です。桃太郎におばあさんが「きびだんご」を持たせたように、社会の荒波に挑む子どもたちに「言葉の力」を授けられたなら。言葉の力は、時に壁に立ちむかう勇気を与え、時にともに戦う仲間をつくってくれるでしょう。
はじめはYちゃんのように真似るところから、いつかは自分だけの言葉で自分のことを語れるように。今後も子どもたちの言葉の力を育ててまいります。
花まる学習会 今夏希(2023年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。