「競争なんて嫌い!」
年中コースの授業冒頭、Iキューブの「高積み競争」をおこなった際にSくんが言いました。負けず嫌いなSくんには、「まわりの子に負けるのがいやだ」「誰よりも高く積みたい」という思いが人一倍強くありました。決してSくんが高く積めないなどという訳ではありません。「先生も一緒にやって!」と助けを求めることもしばしばありましたが、ほとんど自分だけの力で目の高さくらいまで積み上げることができます。一度「難しいな」「できないな」という感情になると、その先入観からなかなか抜け出せないものです。SくんはIキューブに対して「絶対できない!」「難しい!」と苦手意識をもっていましたが、苦手というのは本人の意識だけで、本当は得意なのにと思っていました。
つい先日の授業で「高積み競争」に挑戦したSくん。大人にサポートを求める前に
「崩れても何度も作り直せるのがIキューブの楽しいところだよ。今日は一人でどのくらいまで高く積めるか挑戦してみる? 前よりも高く積めるかな?」
と提案してみました。一度、うーん…と考え
「…じゃあ、やってみる!」
と挑戦しはじめたSくん。すると、どんどん高くなっていくIキューブ。ブロックをすべて使い切り、なんと自分の頭を超えるほど高く積み上げることができたのです。その瞬間、
「やったー! 一番高い!」
と席を立ち、飛び跳ねるSくんの姿が見られました。
その後も、ガラガラ…ガッシャーンと崩れる音が聞こえてきましたが、弱音を吐かず、何度も作り直していました。一番上のブロックを見上げるほど高く積むことができ、いままでの最高記録を出せたことが相当嬉しかった様子。
「Iキューブ、得意になった!」
という発言も聞こえてきました。ポジティブな気持ちのまま、テキストのIキューブのページにも挑戦。取り組む前に「えいえいおー!」と一人で気合いを入れていました。そして、普段苦戦している立体の問題では、
「もうできちゃうもんね~!」
と得意気に粘り強く挑戦するSくんの姿が見られました。その日以降、「Iキューブできる!」「やってみる!」という前向きな言葉が増え、苦手意識は徐々になくなっていきました。Sくんにとって「自分だけの力で、いままでで一番高く積み上げられた」という経験が自信に変わったのです。まわりの友達の様子を気にする姿も見られなくなり、自分自身にベクトルを向けられた瞬間でした。
子どもたちは、日々、競争社会のなかで生きているように感じます。たとえば、スポーツやゲームでの勝敗や学力テストの順位など。「○○に負けた…」と人と比較すると、それが苦手だと思い込んでしまったり、自分を卑下してしまったりすることがあります。そうではなく、「前回よりも10点アップしたい」などと臨んだほうが自信がつき、力は伸びます。ポジティブな思考で過ごせる人生のほうが豊かになるはずです。だからこそ、教室で「前よりもどうだったか」と問いかけたり、前回の自分を越える目標を一緒に立てたりし、子どもたちが「自分との勝負が大切」ということに気づけるようアプローチしてまいります。
花まる学習会 渡邉みなみ(2023年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。