【花まるコラム】『思い出の涙』高野優太朗

【花まるコラム】『思い出の涙』高野優太朗

 「先生、またいつか会えるよ!」
2月で退会した3年生Sくんの言葉です。Sくんは、年中コースから花まるに通っていたベテラン。花まるが大好きな彼は、いつも元気に挨拶をして教室に入ってきます。ニコニコ笑顔でいつも明るいイメージのSくんでしたが、3年生になるとお兄さんの顔つきに変わっていきました。手を挙げている子を見つけると
「先生! あの子、先生を呼んでいるよ」
と気づいて伝えるなど、ぐんと視野が広がりました。
「先生! 僕、レインボータイムのやり方、1年生に教えてくるよ!」
とミニ先生を担当する背中が頼もしかったです。
 そんな彼が2月末で退会すると知り内心とてもショックでしたが、最後は笑顔で見送ろう! と思いました。最終日、授業はいつも通り楽しく進んでいき、終了。挨拶が終わると、すぐに彼のもとへ駆け寄りました。Sくんは少し元気のない声で
「先生、いままで本当にありがとうございました」
と言い、その目は少し潤んでいました。私も
「こちらこそ、本当にありがとう。最後はSのこと笑顔で見送ろうと思っていたのに、Sがそんな顔をしてたら先生も泣いちゃうよ」
と二人して涙を流しながら、ハグをしました。Sの肩は震えていました。しばらくして
「じゃあ先生、僕行くね。大丈夫。またいつか会えるよ!」
そう言い残して、去っていきました。何回も振り返っては手を振ってくれる彼の姿が愛おしかったです。

 また、別の教室の3年生Rちゃん。彼女は何事にも全力で頑張るタイプで、「できた!」「いぇい!」と毎回かっこよくポーズを決めています。ある日の彼女の作文には、こんなことが書かれていました。
「私は花まるが大好きです。理由は、先生たちはみんなやさしいし、おもしろいからです。たくさんほめてもらえると、うれしい~っていう気持ちになります」
花まるが大好きな彼女。お母さんも面談で
「この子、家でいつも花まるのことばかり話しているんです。先生に褒めてもらえるのがモチベーションになるみたいで。いつもありがとうございます」
とおっしゃっていました。
 そして、彼女も同じく2月末退会に。授業中は笑顔があふれていたRちゃんでしたが、授業が終わるとシクシクと泣きはじめました。まわりの子たちも彼女のもとに集まり、
「大丈夫。また会えるよ! 一生の別れじゃないんだから!」
と励ましの言葉をかけ、Rちゃんの背中をさすっていました。それを見た私と講師は感動でもらい泣き。鼻声になりながらグータッチをしてお別れをしました。最後は笑顔で見送る! という私の目標は一度も達成できませんでした。

 私も花まる学習会に6年間通いました。最終授業の日、もう来週からは来ないんだ…と思って、寂しさにおそわれたことを覚えています。大会(特別授業)では仲間と力を合わせて優勝しMVPに選ばれたこと、漢字テストで合格し賞状をみんなの前でもらい嬉しい気持ちになったこと、宿題をごまかして先生に𠮟られたこと、いまとなってはすべてが宝物です。
 SくんやRちゃんが泣いてしまったのも、花まるでの思い出が頭によぎったからだと思います。先生や仲間たちと築いてきた絆があったことも大きいでしょう。きっとこの子たちは花まるのことを忘れないでいてくれると思います。もちろん私もかかわった子たちのことは忘れません。
 これからも目の前の子たちと向き合い続け、たくさん会話を交わし、ともに喜び、悲しみ、さまざまなことを一緒に乗り越えてまいります。私がそうであったように、花まる学習会という存在が子どもたちにとってかけがえのないものになれば幸いです。

 すべての子どもたちをあたたかく迎え、笑顔あふれる教室を作ってまいります。

花まる学習会 高野優太朗(2023年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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