小学1~3年生が取り組む転写教材「あさがお」には3つのポイントがあります。正しい姿勢、正しい鉛筆の持ち方、そしてリズムよくテキパキと見本の字を転写することです。
当時1年生のAくんは、なかなか時間内にすべてを書き写すことができませんでした。なぜかなと見ていると、「きんぎょ」を「き」「ん」「ぎ」「ょ」と一字ずつ書いたからです。
あさがおは、1日1ページの宿題です。まずは、言葉を覚えることではなく、文字を書く練習として取り組みました。文字を書くことに慣れたら、次は文章を読む練習です。家で取り組む際には、実際に声に出して読み、それが「きんぎょ」という言葉だと認識することから始まります。最初はもちろん、読むことも一苦労。しかし、毎日あさがおを続けることで、Aくんは「文字を書く」「読む」、それぞれが一定のレベルでできるようになり、最終的に「言葉を覚えて書く」ことができるようなったのです。
半年ほどで、Aくんの転写のスピードが格段に上がっていました。2年生、3年生と学年が上がると、Aくんは字を書くことが好きになり、さらに作文を書くことも大好きになっていったのです。
先日、授業のあとに講師たちとこんな話をしたことを思い出しました。
「子どもたちは一見成長していないようでも実は少しずつ確実に成長している」
子どもたちの成長には、私たち大人が想像するような成長にたどり着くまでにいくつかのステップがあるということです。
花まる学習会の講師には、子育てが一段落した主婦の方もいます。自分たちの子育てがどうだったのかという話を聞かせてもらいました。
「当時は、バタバタしていて小さな成長に気がつけなかった」
「年齢が上がるにつれて、〇〇ができるようになった! よかったね! と思えなくなっていった」
「目の前のことしか目がいかなかった」
「落ち着いてから振り返ってみると、『あれができるようになったから、いまこれができるようになった』という小さな成長のつながりが見えてきた。だからこそ、花まる学習会に通っている子どもたちに対して、小さな頑張りを褒める、認めることができる」
と言っていました。
保護者のみなさまも子育てをしていた頃のスタッフたちと同じように、忙しい日々のなかで子どもたちの小さな成長を見つけることは難しいことも多いでしょう。ましてや毎日一緒にいると小さな変化に気づけないこともあるかもしれません。そこで私たちの出番です。週1回だからこそ、「あれ? こんなことができるようになったの!?」と見つけることができます。私は、そんな子どもたちの小さな成長をみなさまと一緒に喜び、さらに今後のステップアップに必要なことを伝えられるよう、引き続き子どもたちに寄り添って授業をおこなってまいります。
お子さまの悩みは、絶えず出てくると思います。いつでもご相談ください。お子さまのことを保護者のみなさまと一緒に考え、一緒に悩んでいく存在でありたいと思います。
花まる学習会 濱本和美(2023年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。