【花まるコラム】『早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け』鈴木和明

【花まるコラム】『早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け』鈴木和明

 1月9日(祝・月)、3年ぶりとなる「花まるファミリーカーニバル」を開催しました。午前は代表高濱による講演会、午後は親子参加の授業体験イベントという2部構成で実施。たくさんの方にご来場いただきました。
 私はなぞぺータイム「どのれつもおなじ数」に登壇しました。「必要条件と場合分け」を駆使して考える、論理的思考力が必要とされる問題です。みなさまの様子を見てまわったのですが、自力で解こうとテキストにかじりつく子どもの姿や、家族で協力して考える様子、解き終えたお父さんお母さんがわが子に教える様子も(その逆も)見られました。普段は家で一緒に取り組むのは難しくても、イベントという特別な環境だからこそ協力して取り組めたのではないでしょうか。「教え合う」「協力する」という場面をたくさん目にすることができ、嬉しく思いました。

 「教え合う」「協力する」といえば、以前のコラムで「子どもが『わからない』と向き合えるようになるには」という趣旨のことを書きました。4年生Rくんが「学校でのお助け係の存在によって、『わからない』を受け入れ、質問ができるようになった」というエピソードも書いたのですが、その後、私の教室にもお助け係という役割を取り入れてみました。
 課題の進み具合にもよるので、毎回お助け係を立てることができるわけではないのですが、その日の課題を終えて算数の復習を進めていた5年生Oくんにその役をお願いしました。ちょうどその頃、算数に苦戦していたTくんのサポートをしてもらったのですが、少し経って様子を見に行くと、Oくんの話に笑顔で耳を傾けるTくんの姿がありました。わからない問題があると「ここってどういうこと?」とTくん自ら質問をしていました。私が教えているとき、解けない問題があるとイライラした様子を見せたり、説明を聞く前にやる気がなくなってしまったりすることがあったTくんが、です。
 4年生にも、分数や面積の理解に苦戦している子がいたため、Oくんにお助け係をお願いしたことがあります。疲れもあってか、そのときは眠そうにしていた4年生の子も、Oくんの話にはしっかり耳を傾けていました。やはり大人よりも同世代からの働きかけの方が心的ハードルは下がるのでしょう。彼らの様子の変化がそのことを物語っていました。
 このように、4・5年生を一生懸命サポートするOくんの姿に感化されたのか、最近では、5年生Nくんが「お助け係をやりたいです」と志願してきました。Nくんも上手くコミュニケーションをとりながら、4年生の算数をサポートしてくれています。人に教える経験は、教えられる側だけでなく教える側にも還元されるものがありますので、時間の許す限り、お助け係という役割を続けて子どもたちの様子を観察していこうと思います。

 さて、どうすれば「わからない」と向き合えるようになるのかを考えているわけですが、花まるファミリーカーニバルでの親子のかかわりや教室でのお助け係の活躍を見ていると、わからない本人に対する働きかけ以上に、周囲の人がサポートに入れる(入りやすい)環境をつくることが大事なのだということに気づきます。
 世の中全体を見てみると、人と人が直接かかわり合うイベントが増えてきました。コロナ以降、コミュニケーションの形は変化を強いられましたが、それによって新たに生まれたコミュニケーションの形もありますし、選択肢が増えたというプラスの見方もできます。しかし、人として絶対に忘れてはいけない「手をとり合って支え合う」「困っている人に手を差し伸べる」ことは、リアルコミュニケーションだからこそ実感をもって経験することができると考えます。

 「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という言葉がありますが、この時代だからこそ、血の通ったリアルなコミュニケーションを通じてみんなで一緒に成長・前進していける社会になることを願います。子どもが将来社会に出たとき、より豊かな、より幸せな人生を歩んでいけるよう、これからも勉強を通じてコミュニケーションのあり方を伝えていきます。

花まる学習会 鈴木和明(2023年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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