【花まるコラム】『わくわくのその先に』井上笑里

【花まるコラム】『わくわくのその先に』井上笑里

 先日の年長クラスでは、ぶんぶんごまを扱った思考実験大会をおこないました。こまの中心部分に半円や三角形を描いたり、外側に小さな丸を2つ描いたりしたものを回すとどう見えるか、という実験です。
「丸がたくさん見えるんじゃないかなぁ?」
「ぎざぎざの星みたいになるんじゃない?」
子どもたちは自由に予想を立てました。実際に回してみると…。
「まわりだけ青に見えるよ!」
「三角なのに丸になった!」
「あれ、赤じゃなくてピンクだよ!」
次々と発覚する驚きの結果に、
「次はどんな実験? 何をやるの?」
と興味が尽きない子どもたち。予想が当たった、外れたということ以上に、何が起こるかわからないというワクワク感や予想外の展開に、テンションが上がりっぱなしでした。
 私としては予想通りの反応にしめしめと思いつつ、ここまで夢中になれる子どもたちの姿を見て喜びが抑えられませんでした。結果に左右されず、考える過程を楽しむことができる子、初めて相対する問題でも「わからない」と逃げず向き合える子になってほしいと思っているので、年長の時期からそのような心持ちで課題に取り組める子どもたちに囲まれて、心から嬉しく思いました。

 小学生の授業でも同じようなことがありました。毎回なぞぺーが終わると真っ先にレインボータイムに手を伸ばすNくん。レインボータイムとは、すべての課題が終わった子向けのプラスαのペーパー課題で、なぞぺーよりもさらにレベルの高い思考力問題がそろっています。レベル99の問題のなかには、大人が解いても頭を悩ませるような問題も。基本的にはヒントなしで、答えが違えば「惜しい! もう一回考えてみよう」と再度挑戦を促します。
 そんなレインボータイムを毎週何よりも楽しみにしていて、レベル99を自力で解くことに生きがいを感じていると言っても過言ではないほど魅了されているNくんは、年長の子どもたちと同じように、考えることを楽しめる子に育っています。「ヒントをもらったら意味がないんだ!」と言わんばかりに、何度「惜しい!」と戻されてもめげずに向き合う姿は、さながらスポーツ選手のよう。そのストイックな姿は、大人の私から見てもさすがだなぁと感心してしまうほどです。

 今回は思考を楽しむ力の部分についてお伝えしましたが、教室での子どもたちは、ご家庭ではなかなか見られない、まるで違う生き物のような表情を見せていることも多々あるのだと思います。
「普段家ではだらだらしているんですけど、教室では大丈夫ですか?」
「怒られなきゃ宿題をやろうとしないし、やっとやり出したと思ったら適当で…」
などと、さまざまなご家庭での悩みを相談していただくことがありますが、教室では保護者のみなさまの心配をよそに、いきいきと楽しそうに授業を受けている子たちばかりです。
 そんな子どもたちの良さ、強み、成長点を講師たちからのメッセージとして綴っているものが「タケノコシート」(高学年は「FBシート」)です。週に1回のかかわりではありますが、毎週子どもたちの姿に感動し、ときには頭を悩ませ、どうしたら子どもたちの力を最大限伸ばせるかと真剣に考えている講師たちが側にいることで、子どもたちものびのびと学習することができているのかなと思います。
 子どもたちのことを思い浮かべ、話したこと、一緒に乗りこえたことなどに思いを馳せながら書いた、世界に1枚だけのクリスマスプレゼント。ぜひお子さまと一緒にじっくり味わっていただければと思います。そして、来年への糧にしていただけたら幸いです。

花まる学習会 井上笑里(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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