【花まるコラム】『ガチっとはまる瞬間』小松原学

【花まるコラム】『ガチっとはまる瞬間』小松原学

 先日、花まるアルゴクラブの授業準備をしていると、一人のお母さんが向かいの教室に入っていくのが見えました。スクールFC(花まるグループの進学塾部門)の面談に来た保護者の方でしょう。教室に入る直前、ちらっとしか見えませんでしたが、「あの横顔はKちゃんのお母さんだ!」と思わず教室の扉をノックして入ってしまいました。やはり、昨年度まで花まる教室で担当していたKちゃんのお母さんでした。突然入ってきた私を見て、お母さんは、
「先生、なんでここにいるんですか?」
と目を丸くして驚いていました。
「お久しぶりです! 土曜日はここでアルゴクラブの授業があるんです。Kちゃんお元気ですか?」
「思春期の真っただなかで、反抗してばかりですが、元気いっぱいですよ。中学校生活にも慣れてきたみたいで」
「そうですか。この前、テストを受けに来たKちゃんに会いました。『なんで、ここにいるの?』とお母さんと同じリアクションでしたよ。思春期のKちゃんは、冷たい対応でしたが…」

 そんな他愛もない会話をしながら、この春から中学校に進学したKちゃんの近況も話してくださいました。Kちゃんは、陸上部に入部したそうです。部活と勉強を両立させるのは大変なようですが、その合間を縫ってFCに週3回通う日々。中学校の担任は、言葉遣いや生活態度、スケジュールの管理について、耳にタコができるくらい注意するほど厳しい先生だそうです。
「小学校の先生より厳しくて怖い」
と家でも漏らすほど。毎朝、慌てて学校の支度をしていると
「お母さん、教科書がない!」
「体操着はどこ?」
「面談の紙、書いてくれた?」
と大慌て。漫画の主人公のようにバタバタしながら家を出て行くKちゃんの後ろ姿を玄関から見送る日々が続いているそうです。

 「FCの自学室に行ってみたら?」
中学校の定期テストが近づいたある日、お母さんは家での勉強がはかどらないKちゃんに思い切って声をかけました。小学校まではお母さんと一緒に、花まるで立てたスケジュールを見ながら勉強をしていました。しかし「中学校では自分のことは自分でできるようになってほしい」と自立に向けての準備をするために思い切って伝えたそうです。お母さんは
「一緒にやろうよ」
とKちゃんが甘えてくるかもしれないと思っていたそうですが、返ってきたのは
「わかった」
の一言。拍子抜けした部分もあったようですが、自分のことだからと、それからはFCの自学室に通わせるようになりました。
 自学室を出るときに、自宅に電話をする約束をしていたKちゃん。その電話で
「もう少し勉強していくね」
と話していました。家ではだらだらと過ごしてしまうから、先生と友達しかいない自学室はいつもより集中できるのかもしれません。こんなにも成長するのかとお母さんも驚いていました。自立の一歩を歩み始めたKちゃんを嬉しく思う反面、急に大人になって自分から離れていくことが寂しかったそうです。お母さんは、花まるでコツコツ取り組んできたことが、小学校から中学校に上がり、環境が変わったことで活きてきたと話していました。

  Kちゃんの成長には、環境の変化だけでなく、周囲の大人・友達とのかかわり、そして、お母さんの接し方も関係しているように感じます。さまざまなものがかみ合ってプラスのエネルギーになったとき、子どもたちはぐっと成長するのでしょう。

花まる学習会 小松原学(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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