1歳3か月になった次男が最近、小学1年生の長男の真似をするようになりました。計算カードを音読する兄を見て、「7-2=5」の最後の「ゴ!」という音が気に入ったらしく、見よう見まねで計算カードを持ちながら「ゴ!ゴ!」と披露します。私はというと、そんな次男の姿をビデオにおさめようとするも、ボタンを押したときにはすでに遅しで、すでに別の遊びが始まっています。コロナ禍で増えたおうち時間を満喫している今日この頃です。
真似ると言えば、教室でも、子どもたちの間で自然に起きていることです。つい最近、小学生クラスの特別授業「国語大会」で、わからない問題を考え込んででいたAちゃん。隣のBちゃんに何度かヒントをもらうという場面がありました。すると今度は、授業後半でBちゃんが頭を抱えていたら、Aちゃんが「それはね…」と教えてあげていたのです。普段は大人しいAちゃん。友達に教える姿を見たのは初めてでした。Bちゃんが教えてあげて、次はAちゃんが教えてあげる。そんな教え合う姿に、ジーンときました。「やってもらって嬉しかったことは、やってあげたくなる」というのは、どの子にも共通している、美しい心なのだと思います。
2年前のサマースクールで、いまでも鮮明に覚えているエピソードを紹介します。私のチームには、8名の元気な男の子がいました。一番上は5年生のAくん。身体は中学生くらいに大きく、力もありました。しかし、出発地では開口一番、「めんどくさい」「帰りたい」と言っていたのです。バス内のレクリエーションでも気持ちがなかなか乗らず、外ばかりを見ていました。宿内でもとてもマイペースで、Aくんの準備を1年生を含めみんなで見守る場面があったほどです。そんなAくんでしたが、2日目になると急に動きがよくなっていました。下級生の布団敷きを手伝ったり、テキパキ準備をしたり、後ろ向きな発言もなくなり、「楽しい」とさえ口にするようになったのです。「人が変わったように」という言葉がぴったりあてはまるほど、頑張り屋さんになっていたAくん。その変化に、ついAくんに声をかけました。Aくんの変化の素晴らしさを伝えて「何がきっかけだったの?」と尋ねると、「クワガタ体操。あれで、頑張っている人がわかるようになったんだ」と話してくれました。2日目の朝、花まる学習会の代表高濱が現場に現れ、子どもたちと「クワガタ体操」をしたのでした。体操という言葉の響きからは想像できないほど、終わったあとはクタクタになるくらい、全力でやるのがクワガタ体操です。高濱が一通り説明を終えたら、決まってリーダー(大人のスタッフ)の見本を見せます。かくいう私も、前に出て全力で臨みました。このリーダーたちの見本を見て、「頑張っている人がわかるようになった」のだそうです。「頑張る素晴らしさ」が響いたあの日のAくんの変化は、忘れられません。
日々、あらゆる体験から、感じて、肥しにしていく子どもたち。彼らの感受性は、可能性を無限に広げるものだと、彼らと接していてつくづく実感します。そして、そんな素晴らしい子どもたちとのいまを共有できていることを幸せに思います。
花まる学習会 臼杵允彦(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。