【花まるコラム】『リアルな体験を通じて』須永修平

【花まるコラム】『リアルな体験を通じて』須永修平

 子どもたちと接していると、時折、私も知らないことを知っていたり、新たな発見をする場面を見かけたりします。そういった子どもの知識、感性はどのようにして身につくのでしょうか。今回は、ある生き物についての二つのエピソードをご紹介します。

 ある日、年長コースの授業でカエルのマネに挑戦しました。Aちゃんは「ゲロゲーロ!」と声を出しながら、ピョンピョンとカエルのようにジャンプしていました。「カエルを知っている?」という質問に「うん!」と答えたAちゃんでしたが、さらに「見たことはある?」と聞くと首をかしげて考えたあとに、首を横に振って「なーい」と言いました。
 カエルを知っているのに見たことがないとはどういうことだろう、と不思議に思いました。なぜなら、群馬県で育った私にとって、子どもの頃から近所の田んぼや小川にはカエルがたくさんいて、夜には鳴き声が聞こえるほど、カエルや生き物が身近な存在だったからです。Aちゃんに詳しく聞いてみると、「テレビとか本で見た~」と言います。私は映像や絵のなかでしかカエルを知らないということを聞いて驚きました。
 そこで、「オタマジャクシを知っている?」と聞くと、Aちゃんは先ほどのカエルと同じように「知ってる!」と笑顔で答えます。しかし「カエルの子どもってなんだろう?」と聞くとポカンとした表情を浮かべ「ん?」と首を傾げていました。おそらくそれぞれを別々に見ていて、カエルとオタマジャクシがつながっていなかったのでしょう。

 対して年中特別授業の外遊びでの一幕。自然のなかを思うままに探索していて、水辺で何か生き物がいないか探していました。そこでオタマジャクシを見つけると、「この前はね、カエルを捕まえたんだ!」と満面の笑みで教えてくれたBくん。普段から自然のなかで遊ぶことが多いようで、木を見て「これはカブトムシが好きなクヌギの木~」と木の種類まで知っていました。Bくんは虫が大好きで、虫取りに熱中しているうちに自然と覚えてしまったようです。

 本を読んだり、映像を見たりすることももちろんいいのですが、実際に体験したことを話しているときの生き生きとした表情や熱量は何にも代えがたいものがあります。
 物事は聞いて覚えるよりも、体験するほうがたくさんの発見があり、おもしろいと私は考えています。なぜなら体験したことは自分だけのものだからです。聞こえる音や触ってみた感触、抱いた感想、すべてが自分のものになります。そして、それらが自分だけの学びになります。

 私は、いまの自分の感性を形成しているのは幼少期の自然とのふれあいだと考えています。外で遊んだ帰り道に川のせせらぎを聞きながら茜色に染まった空を眺めたときに、自然の美しさを感じました。また、キラキラと輝く川の水を見て、日常とは異なる疑問やワクワクをたくさん感じました。私は自然のなかで好奇心を育ててもらい、学ぶことが好きになりました。

 子どもはもともと遊び、楽しむことの名人です。これから花まるの授業や野外体験を通じて、子どもたちに、自分で体験することの楽しさを伝えていきます。

花まる学習会 須永修平(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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