【花まるコラム】『わからないのその先』渡邉みなみ

【花まるコラム】『わからないのその先』渡邉みなみ

 花まるの授業で、子どもたちには
「わからなかったら、すぐに聞いてね!」
と伝えています。自分から聞くということは学習に向き合う第一歩。ここで苦戦しているなと気づいてサポートすることもできますが、自分から言えるかどうかで大きく変わります。ですが、「わからない」と子ども自身から伝えることはとても難しく、なかなか勇気が出ない子が多いです。わからないからもうやりたくない、わからないと思われたくない、自分で考え抜きたいなど、子どもによって理由はさまざまです。特に高学年になると、口酸っぱく「わからないことをそのままにしないでね! できることを増やしていこう」と伝えます。そのままにしておくとますますわからなくなってしまい、勉強が好きではなくなってしまうからです。伝えてすぐ変化があるわけではありません。長い時間をかけて伝え、見守っていく必要があると考えています。

 Aくんは3年生の頃、わからなかったりできなかったりすると、突然泣き出してしまうことがありました。
「俺にはできない! もうやらない!」
間違えることはダメなことという意識も強かったのでしょう。はじめから諦めているわけではなく果敢に挑戦するのですが、すぐに気持ちが折れてしまうことが多かったのです。そんなAくんを励まし、認め続けながら、一緒に頑張ってきました。そして、4年生になったAくん。高学年クラスに上がると、学習の難易度も上がります。泣くことは減りましたが、わからない問題の壁は高く、最初の頃は「もうやらない」と投げ出してしまうことがありました。授業が終わるとすぐに帰宅するAくん。間違えた問題があった日は「今日は残って一緒に頑張ろう!」と何度も念を押してやっと、渋々取り組むのでした。

 Aくんに変化があったのは5年生になってから。算数の宿題を見てみると、答えをすべて埋めていましたが、丸はほとんどない状態。学校ではまだ習っていない問題で、前週授業でやった解き方を忘れてしまったのです。すると、Aくんが
「どこが違うの? わからないから教えて!」
と言いました。以前のAくんなら、丸のないノートを見て、「もういい!」と言っていたかもしれません。「教えて」と言えるようになったのは、大きな成長です。そして、どこで間違えたのかわかった途端、一気にモチベーションが高まり、集中して解き進めることができました。以前は、渋々居残りをしていたにもかかわらず、
「今日はここまでやってから帰る!」
と自主的に頑張れるようにもなりました。

 わからないままにしない。これは勉強だけでなく、人生観にもつながるのではないかと考えています。これから子どもたちはたくさんの壁にぶつかることでしょう。その壁から目を背けず越えるためにはどうすればいいのかを考えられる人になってほしい。なかなか、自分から一歩を踏み出せないかもしれません。だからこそ、寄り添いながら、気軽に頼ることのできる環境作りに努めてまいります。

花まる学習会 渡邉みなみ(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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