3月末に雪国スクールに参加してきました。参加した子どもたち一人ひとりがそれぞれに目標を持って過ごした2泊3日。3日間思い切り遊びつくし、帰路につくバスのなかで私から子どもたちに「雪国スクールはどうだった?」と声をかけました。すると、満たされた表情でその質問に答える子どもたちの姿がありました。
「私は苦手なものを食べられるようになったんだ!3回苦手なものが出たんだけど全部食べられたの。Aちゃんがおいしそうに食べているのを見て、挑戦しようって思ったんだよね」
「リフトに乗るのはちょっと怖かったけれど、友達と一緒に乗ったら楽しかったなぁ。いろいろな話をしたんだ!リフトが止まったときに1人だったらきっと泣いちゃったと思うなぁ」
「何回か転んじゃったけど、班のみんなが助けてくれたんだ!『大丈夫?』って言ってくれたことが嬉しかったの。そのあとは、転ばないで滑れるようになったんだよ!」
壁を乗り越えた経験。楽しかった思い出や嬉しかった出来事。それぞれに共通して出てくるのは“友達”や“仲間”というキーワードでした。一緒にいるから頑張ることができる。一歩踏み出すための原動力になる。教室に通う子どもたちの様子を思い浮かべても、私自身の人生を振り返ってみても、“友達”や“仲間”に触発されて力を発揮できた場面はたくさんあるよな、と思うのです。
花まる学習会に通っていた当時2年生のSちゃんとYちゃん。同じ教室に通うことですっかり仲良くなった2人は、素敵なライバル関係を築いていました。相乗効果を生み出すほど、互いにプラスの刺激を与えあっている様子。
「作文でどっちがたくさんの漢字を書けるか挑戦してみようよ!」「いいね!やるやる!」
「たんぽぽ検定(低学年授業で使用する古典素読教材『たんぽぽ』の暗唱テスト)どこまで終わってる?」「3つ終わってるよ!」「え!じゃあ私もやってくる!」
1人でも意欲的に取り組めるのだろうと思いますが、 2人だからこそ“もっと”頑張れる。その熱量がひしひしと伝わってきて、関係性を羨ましく思うほどでした。
私が“友達”に触発された最初の記憶は、5歳の頃までさかのぼります。近所に住んでいた同い年のHくんが補助輪を取った自転車を颯爽と乗りこなす姿を見て衝撃を受けた当時の私。それまでは補助輪をつけていることに何の抵抗もなかったのですが、家に帰るなり大号泣しながら「自転車の練習をしたい!」と言い、母親に公園までついてきてもらいました。何度も転び、膝をすりむきながら練習を重ね、支えてくれていた母親の手を離れてペダルを漕ぎ出すことができたときの気持ちよさはいまでも忘れません。ひと踏ん張りして得ることができたこの成功体験は、いま思えば小さな出来事ですが、現在も記憶に残っているほど成長の糧になっています。
これから授業をしていくなかで、子どもたちに伝えたいことがあります。それは、成長のきっかけを与えてくれる出会いを大切にしながら過ごしてほしい、ということです。毎週の授業でともに学び、一緒に楽しめる仲間と過ごす時間。心が折れそうになっても刺激し合い、励まし合って乗り越える経験。野外体験などの現場での一期一会。子どもたちのこれからにとって貴重な経験、財産になると信じています。日々の授業で子どもたちが一歩踏み出すきっかけの一端を担うことができたら、私としてはそれ以上に嬉しいことはありません。
花まる学習会 秦野達也(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。