【花まるコラム】『「知りたい!」「学びたい!」の種まき』菅原忠

【花まるコラム】『「知りたい!」「学びたい!」の種まき』菅原忠

 先日おこなった「国語大会」では、川柳や慣用句、漢字に触れました。

 川柳の作成を通して、俳句とは違ったライトな言葉遊びの楽しさを知ってもらえればいいと思っています。五・七・五の形式自体は知っている子がほとんどでしたが、言葉の音数やリズムに結びついた理解には及んでいないようでした。たとえば、漢字で書くと2文字でも、実際の読み方は5文字を超えることがあります。また、「あそびましょう」は7文字ですが、リズムで捉えると5文字でおさまります。そういった音とリズムの関係を知ってもらうため、手拍子をしながら「パパパパパン」などと声に出し、耳と動作で体感してもらいました。

 川柳のおもしろさは、自分の心をさらけ出すことです。子どもたちに川柳を作ってもらうと、作文よりも簡単に気持ちをさらけ出しているなと感じます。作文で「自分の気持ちを書きましょう」と伝えるとどことなくハードルが高くなります。それは、どこまでも永遠に続きそうな文章の量が心理的なカベとなっていることが多いからです。一方で、川柳の五・七・五のリズムに乗せることに集中すると、どういう文章を書くかではなく、自分はどう感じたかにフォーカスしやすくなるのだと思います。また、川柳で言葉を紡ぎ出していくと、プラスの感情だけでなく、マイナスの感情も表現しやすいようです。多くの子は作文で気持ちを書こうとすると、いいことを書かなければならないという思考に偏りがちで、結果「楽しかったです」「うれしかったです」などの言葉で締めくくろうとしてしまいます。しかし、川柳という型で気持ちを表現すると、もっともっと気持ちが細分化され、感情の動きもかなり細かい一部分を切り取れるようになるのだと、子どもたちの作品を見て思いました。

 慣用句を日常で意識して使う子は稀でしょう。しかし、それぞれの言葉を聞けば「あぁ~聞いたことある」と記憶にある言い回しもあったようです。「口を割る」のように、言葉の額面通りに受け取ってしまうと「それはあり得ない!」と思う組み合わせも、「割る」から「さらけ出す」「解放する」のようなイメージがつかめると、「なるほど!」となります。今回は、「口、足、顔、腹」など、イメージしやすい言葉を使った慣用表現に触れました。
 たとえば、「手も足も出ない」「歯が立たない」のように、別の慣用句で似た意味の言葉、あるいは「引けを取らない」のように対義語になる言葉を探していくのも語彙力を広げていく方法です。何か言葉を一つ覚えたら、「同じ意味の言葉はあるかな?」「反対の意味の言葉って何だろう?」とご家族でいろいろ考える時間を設けることで、有意義な学びの時間となります。

 漢字は「練習」というワードが出ると課せられたものとしてどこかやらされ感を抱きますが、「見つけ出す」「探し出す」という伝え方にすると夢中で辞書をめくり書き出すようになります。学習内容に「ゲーム性」の要素を加えると本気になるのはどの年齢の子も変わらないなと思います。そして、漢字を探し出すミッションを通して得られる「モレなく探し出す集中力」こそ、学習において積み上げておきたい力です。「草かんむりで3画の漢字」を見つけ出すために、多くの草かんむりの漢字を書き出し確かめていった子どもたち。そうやって自然と漢字を書くという行動を起こせています。3画のカタカナを見つけ出すために五十音すべてのカタカナを書き出すことに必死になった1年生の子は、1つ数えモレていたことで完答にはならず悔しさを見せていましたが、それにより見逃したカタカナの印象が鮮明に残ったはずです。

 特別授業で触れたコンテンツはきっかけにすぎません。言葉のゲームおもしろかった!という感情から、〇〇はどうなんだろう? と次の興味につながっていけば幸いです。

花まる学習会 菅原忠(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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