【花まるサマースクール2023】ぶらぼー/中山翔太🌻

自分の幸せ

Aちゃんは、顎の下に手を置いて考えていた。遠くのほうでは、仲間がAちゃんを呼んでいる。
「うーん、ちょっとだけ待って！」
Aちゃんは財布を握ったまま、まだ決められずにいた。おこづかいを使って何を買うか。みんなと一緒にお菓子やジュースも買いたい。こんなにも暑いとアイスもいいな。出発前はお母さんとお父さんにおみやげを買いたいと思っていたのだけれど…。


「こういうときって、どんなおみやげだったら買えますか？」 考えた結果、Aちゃんは私のところへ相談しに来ました。そして、サマースクールに参加する前に家でこんな話をしていたと教えてくれました。 「おみやげは何がいい？」 「Aが友達と楽しんでアイスやお菓子を買って食べてほしいから、おみやげは海辺の貝殻とかがいいな」 大好きなお母さんとお父さんとの会話を覚えていたからこそ、Aちゃんは葛藤していました。お母さんとの約束として、友達と一緒にお菓子を買おうと決めた。でも、やっぱり家族におみやげを買いたい。さて、どうしたものか。
たまたま通り過ぎようとした同じ班のBちゃんが私とAちゃんの会話を耳にして、話に参加してきました。
「わかるー！　私もどうしようか考えていたんだよね」
「食べたいものもあるし、買いたいものもあるし、千円で足りるか心配だし…」


2人のやりとりを見ていて、嬉しくてたまらなくなりました。おこづかいをもらえると聞くと、どこかバカンスのように感じるかもしれませんが、お金をどのように使うかということは実践的な学びです。計算しながら買い物をするということもその一つでしょうが、私はそれ以上に買い物を通して「自分は何に幸せを感じるか」を知ることが大切な学びになると考えています。だから、子どもたちにおこづかいを渡す際に伝えていることがあります。「事前に何を買おうか計画してきた子もいるでしょう。仲間と相談して一緒に何かを買おうと思っている子もいるでしょう。この千円は誰から何を言われることなく、自由に使っていいものではあるけれど、自分が自分を幸せにするために使ってほしい。だからよく考えて、十分に悩んで、納得して決めてほしい」と。


さて、AちゃんとBちゃんと私の3人による作戦会議では、結局私に頼ることなく2人で結論を出すことができました。私はただ見守っていただけでした。 「やっぱり、先におみやげを買おう！　もし、お菓子を買うお金が足りなくなったら、2人で半分ずつ出して、分けられるものを選べばいいんだ！」
2人が出した納得のいく正解でした。そして、このエピソードもお母さんとお父さんにとって、すてきなおみやげになるのでしょう。そのあと、駄菓子屋さんで肩を寄せ合ってお菓子を選ぶ2人を見かけました。きっと2人にとって忘れられない夏の思い出になったと思います。



2023年 夏
花まる学習会　ぶらぼー/中山翔太

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