スクールFC の名物のひとつに“自学タイム”があります。いわゆる自習をする時間なのですが、ただ静かな環境を提供しているだけではありません。学習の質を上げられるように、という視点でスタッフがかかわり続けています。わからない問題の質問に答えることはもちろん、何から手を付ければよいのかあたふたしている子に声をかけて一緒に考えたり、使わないテキストはしまって机の上をいったんきれいにしようかなど提案したり…、といった役割をもつ監督が同じ部屋にいます。手取り足取りのレクチャーから自学をスタートする子ももちろんいます。“自分で学ぶ”とはどういうことかをともに考え続けることで、どんな子でも必ず自学できるようになっていきます。
4年生の1学期。FCの学年は2月から新4年生となり、4科目の学習が本格的にスタートしました。授業後の自学室は通常の授業に慣れてきたら少しずつ使っていこう、という方針です。1か月、2か月と時間が経つにつれて投業後に残る自学室メンバーは増えていき、春休みを終えて学校でも4年生になったタイミングで自学室デビューする子もいます。この頃には、自分のスタイルで安定して学習できる子も出てきます。
5月のある日、普段は授業終わりにすぐ帰っている男子が自学室に残ろうとしていました。算数と理科の授業が終わるのが19時30分。そこから任意の自学室利用がスタートします。
「お、今日は残って頑張るんだね!」と自分の席を確保する彼に話しかけました。
「うん、お母さんと約束して8時まで残ります!」なんとも誇らしげに答えてくれました。
さて、彼の自学の様子を実況中継風にお伝えしましょう。
開始2分。まわりにはその日のテキストの続きに取り組む子が8割。学校のプリントやドリルを開く子が2割。彼は…カバンを大きく開いて何やらごそごそと探しています。
4分。探していたのは算数のテキストでした。しかしノートは出ておりません。また探します。
5分。ノートは出てきました。しかし筆箱が…
6分。鉛筆を持ちましたが、問題を解くのではなく例題の模範解答を眺めています。
10分。席を立ちました。職員室に下りて、キッズ携帯で電話をかけます。
12分。つながらないのでメールを打ったようです。
18分。席に戻って本日の算数の解きなおしが1問終わりました!ふぅと一息ついて席を立ちます。
20分。再び職員室で電話をかけています。「さっき、8時まで残るってメールしたけど、届いた?」
24分。算数の2問目が終わりました!次の問題がわからないようで質問をしているところです。
27分。ちょうど問題が解けたタイミングで、ちらちらと時計が気になって仕方がありません。
29分。ものすごい勢いで片付け開始。
30分。長針が動いた瞬間に退出していきました。廊下は走らないでね!
実質勉強していた時間はどのくらい?と大人の目線で突っ込みたくなるかもしれません。私自身、同じ教室でほかの生徒ともやりとりしながら横目で彼の動きを見ていましたが、あえて彼の行動に介入はしませんでした。自分の判断でやることを決めて、困ったら質問ができていた、というところに質の高い自学として光るものを感じたからです。翌週の自学室に残るときには、ご家庭からは「途中の連絡は要らないよ」と伝えられたようで、席を立つことはありませんでした。(29分の猛スピード片付けのちに、約束の時間ぴったりに校舎を出る“定時退舎”は健在でしたが…。)
夏休みも終えた2学期には、彼は自学室の常連となっていました。いまでは自学室監督が20時になったことをアナウンスすると「あぁ、このページまで終わらせたかったのに!」という言葉が出てくるほどに。定時はちょっとだけ後ろになったようです。
今日はどんな自学室になるのか、わくわくしながら監督してきます!
スクールFC 梅崎隆義(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。