【花まるコラム】『父になる』宮阪太久哉

【花まるコラム】『父になる』宮阪太久哉

 ついにわが子も妻のおなかのなかで36週を迎えました。正期産まであと少しというところです。

 妻が妊娠してからここまでも、さまざまな道のりがありました。
 まず妻を襲ってきたつわり。温かい食べ物を受け付けなくなり、キッチンにも立てなくなった妻。身体がみるみる変化していく様子を隣で目の当たりにしました。この頃から妻の体調にあわせて料理を作っていくことを始めていきました。また妻がつらそうにしていたことの一つとして通勤がありました。バスや電車の揺れに耐えきれず、何度も降りては休んでということの繰り返し。そこで最寄り駅からの始発電車を狙い、私が先に行って席を確保しては、妻にその席を譲るという日々を過ごしていました。
 次にやってきたのは、胎盤が下がってきたことによる自宅安静。妻は、1日中、横になる日々を繰り返していました。私が帰ると「ようやく人と話せる」と妻は喜びました。そこで夜はとにかく話を聞く、私は今日あったことの話をする、という時間がいままでよりも増えました。すると、妻が笑顔になっていくのが、隣にいてよくわかりました。ちなみに「平日1日あたりたったの16分の会話が、月収10万アップと同じ程度の満足度をもたらしてくれる。(山口一男教授)」という話がありますが、それだけ女性にとって話を聞いてもらうということが大事なのだと改めて痛感しました。そして、妻に「体調や心境の変化を日記にしてみたらどうか」と提案してみました。吐き出すことが大事ではないかと感じたからです。妻の書いた日記に私がコメントする、そんなことも日課の一つになりました。

 その後、育休までの間、妻は一度職場に復帰をしましたが、34週になったころ、切迫早産で再び自宅安静に。現在は、ふたりで家事をなんとかまわしていったり、食事を作ったりと励む日々です。

 先日、出産場所として選んだ助産院での後期学習会がありました。本来は夫婦で参加する勉強会なのですが、妻が自宅安静となったため、一人で参加することに。そこでは、お産の流れ、この時期の赤ちゃんや夫婦の状況を学びました。
 また、「パパランチ」というランチ会もあり、先輩パパに質問できる時間もあったので、そちらも参加してきました。そこで私は、「立ち合いのお産で夫ができることはなんですか?」と質問しました。すると、「普段通りの空気づくりがおすすめですよ。夫婦の形はそれぞれ。そのときだけ頑張るよりも家のリビングにいるような空気感をつくるのがいいと思います。あとは助産師さんが指示してくれるので、その通りに臨機に動けば大丈夫」との返答をいただきました。お産の話を聞き、「いよいよ、父になる!」という思いになりました。

 きっとお産の立ち会いのときには、走馬灯のように今までの十月十日(とつきとおか)を思い出すのでしょう。

 3年待って、ついにキミの存在を確認できた日。小さな小さな小さな種を見て、命がお腹にいることに震えた日。ふたりで誰もいない丘に行き、命の誕生に「やったぞー!」と叫んだこと。心拍が確認できるまで嬉しさと不安でずっとそわそわしていた夜。病院でキミの大きくて力強い心音を聞いて、確かに生きていると感動したこと。聴診器を買って、心音を聞いた日々。触ったお腹が動いてキミを感じたこと。お腹に向けて絵本を読んだこと。キミの名前決めのためにたくさん話したこと。お腹にキミの胎児ネームで話しかけたこと。 
 まだ出会っていないのに、もうこんなにたくさんの特別な思い出ばかり。無事に産まれて来られるように、お父さんも応援しているよ。安心して出てきておいで。キミはどんな顔をして、どんな泣き声をして出てくるだろう。お母さんと一緒にキミのことを待っているよ。

 大きくなったら一緒にキャッチボールしようね!

花まる学習会 宮阪太久哉(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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