年長コースでは、2月に硬筆大会を開催します。自分の将来の夢を、お手本を見ながら丁寧に書きます。おそらく年長の子たちにとっては初めての硬筆であり、消しゴムを使えないという緊張感もありながら、子どもたちはとても真剣な表情で取り組みます。硬筆大会に向けて事前に子どもたちの将来の夢を聞き、お手本を作成するのですが、毎年提出される将来の夢を見ながら微笑ましく思います。
「かっこいい消防士になりたい」という現実的な夢もあれば、「ポケモントレーナーになりたい」「世界を救うヒーローになりたい」など、子どもならではの夢を書く子もいます。どんな夢であれ、「将来こうなりたい!これをやりたい!」という思いがあることは素晴らしいことです。
私が年長の頃に抱いていた将来の夢は「ピアノの先生」でした。当時の私はピアノを習っておらずまったく弾けませんでした。それでも憧れがあり、小学生になってから念願のピアノを習い始めました。その後ピアノは続けていましたが、いつしか「ピアノの先生になりたい」という夢は忘れていました。
それからしばらくは将来の夢がないままでしたが、中学生での職業体験がきっかけで「保育士」という夢を見つけました。近くの保育所に行って3日間子どもたちと触れ合ったのですが、そのときの子どもたちのかわいさ、純粋さに心打たれたのです。
保育士になるために保育科のある大学を調べ、オープンキャンパスなどにも行きましたが、私は高校で化学の魅力に気づいてしまいました。「大学で化学を勉強したい」と両親に頼み、化学科のある大学に進学することに。4年間化学を勉強した結果、就職活動の際に思ったのは「やはり子どもとかかわっていきたい」ということでした。化学系の企業に就職すると思っていた両親には驚かれましたが、「やりたいことをやりなさい」と背中を押してくれました。そして大学の勉強と並行して保育士資格を取得し、現在は花まる学習会の教室長として子どもたちの前に立っています。
ピアノの先生にはならなかったけれど、保育士資格を取得するときにピアノの経験が役に立ちました。保育士にはならなかったけれど、花まる学習会で素敵な子どもたちと保護者の方に出会うことができました。化学系の企業には就職しなかったけれど、化学という勉強にのめり込んだ経験から、子どもたちに勉強の楽しさを教える目標ができました。
抱いた夢を実現しなくても、経験したことはどこかでつながり、決して無駄にはなりません。そして、一番身近にいる両親がどんなときでも自分の夢を応援してくれたとは、自分の選択が間違っていなかったという自信につながりました。子どもたちもさまざまな道を通りながら、自分の好きなものや夢に向かって突き進んでほしいと思います。そして保護者のみなさまには、その夢をぜひ応援していただきたいと思います。将来子どもたちがどんな道に進むのか、どんな選択、経験をしていくのか、非常に楽しみです。
花まる学習会 右田優羽(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。