先日、日本テレビの『鉄腕DASH』という番組を観ていたときのこと。 神奈川県三浦市にある城ヶ島にマダコを取り戻そうという企画があり、そのなかで産卵のシーンがありました。タコは産卵してから1ヶ月間断食をして卵が孵化するまで守り続けるそうです。何があっても揺らぐことのない強さが画面越しからも伝わってきました。卵を守っているとき、ウツボが近くにやってきました。ウツボにとってタコは大好物だそう。そのタコに卵があるとなると、よだれが出そうなくらい捕食したいものになるでしょう。ウツボが卵を捕食しようとしましたが、母であるタコが卵を守りきり、一つも食べられることはありませんでした。しかし、一つ代償が残りました。母ダコの腕にはウツボに噛まれた跡。その傷は、まさにわが子を必死に守り切った証でした。自分とは違う生きものでも、やはり「お母さんは強いなぁ」と痛感しました。そして、このテレビ企画を観たとき、ふと頭に浮かんだのは自分の母のことでした。私の母は、私が大学2年生の冬まで会社員として 茨城県から東京都まで勤めに出ていました。毎朝5時に起きて、家族の朝食を作りはするものの、一緒に食卓を囲むことはなく、6時半頃には家を出て会社へ向かう日々を送っていました。帰りはというと、20時頃に最寄り駅に到着し、帰宅。帰宅したら休む間もなく家族全員の食事を作り、一緒に夜ごはんを食べる。そして、お風呂に入って寝る、というのが母の生活サイクルでした。幼少期の母への印象は、「毎日仕事に行っている人」でした。私の家庭は父が自営業だったので、母と過ごした時間よりも父との思い出のほうが色濃く残っています。しかし、そんな母との思い出のなかで一つだけ印象に残っている出来事があります。
それは、私が小学1年生のときのこと。小学校から自宅までの帰り道に梅の木があるのですが、ちょうど春先で実がなっていた頃に事件は起きました。2年生の男の子から梅の実を野球ボールかのように投げられ、顔面にあたり激怒。やり返したことによって、殴り合いの喧嘩にまで発展してしまいました 。その後、学校の先生にこっぴどく叱られ、なぜ自分が怒られなくてはいけないのかという怒りと、怒られたことに対する沈んだ気持ちで家に帰りました。すると、いつもは帰りの遅い母がたまたま早く家に帰ってきていたのです。
「おかえり。元気ないね。どうしたの?」
そう母が優しく問いかけてくれたことにより、私は安心して大号泣。帰り道であった出来事を話しました。
「あらそうだったの。こりゃ、顔痛いね。早くよくなれ~!」
と顔をくしゃくしゃする母に照れた私は「やめてよ、もう!」と 一言。
「なんだ、元気じゃん! それだけ元気があればごはんもおいしく食べられるよ。今日は何がいい?」と母はその日、リクエストした私の大好きな餃子を作ってくれました。困っているとき、悩んでいるとき、センサーでもついているんじゃないかと思うくらい私の変化に気がつく母。しかし、いつも手を差し伸べてくれるわけではありません。何でも助けてくれるわけではないけれど、私がつまずいて転んでもいいようにどっしりと構えてくれています。そんな母にはいまでもいろいろなことを話します。仕事で悩んでいること、プライベートでハマっていること。なんでも話せるのは母にだけです。ときにダメなことはダメ、と叱ってくれたり、ふとした瞬間に優しく包み込んでくれたりする母の存在を近くで感じているからこそ、私は毎日を元気に、そしてたくましく過ごすことができているのだと実感しています。
私が母に対して感じているように、子どもたちにとってお母さんは太陽。日の光で道を照らし続け、あたたかく包み込んでくれる大きな大きな存在です。子どもたちが元気に過ごすことはもちろんですが、お母さんたちに幸せに元気で過ごしていただけるよう微力ながらではございますが、今後もサポートさせていただきます。
花まる学習会 藤枝詩織(2023年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。