【花まるコラム】『子育てに不正解はない』林飛翔

【花まるコラム】『子育てに不正解はない』林飛翔

 先日、高校時代の友人と電話をしました。彼女はいろいろあって、いまは女手一つで、5歳になる長女と4歳になる長男を、働きながら育てているそうです。そこで一時間ほど、子育てのことや、母親の苦労をひたすら聞いていました。友人の言葉はいままでにないくらい私の胸に深く、そして強く刺さりました。

 基本は毎日楽しいし、幸せ。でもたまに言うことを聞かない子どもに私が怒り狂うこともある。子どもが泣きじゃくってしまい、もうどうにもならないときはつらい。私の母に頼ることもできるけれど、負けた気がして頼れない。おやつはあと一個だけと約束したのに、もっと食べたいと言い出して喧嘩になってしまう。そして叱りすぎたかな?とついつい自分を責めてしまう。下の子に構いすぎて上の子が「あっ、いま我慢しているな」とわかってつらい。そして寝顔を見て「ごめんね」って思う。仕事に出かけようとする私に娘が「きょうはさむいからこれきていきな」と心配してくれたり、「おかあさんはいつもがんばっているね」と言ってくれたりしたことが嬉しくて泣いてしまった…。

 私も自炊をするので冬の時期のお米研ぎの冷たさや、洗濯物を干すときの寒さ、お風呂掃除、家事をする大変さは知っています。そして子育てと家事の両立は保護者のみなさまから宿題で言い争いになることや、ゲームのことで喧嘩になること、余裕がなくてつい感情的になってしまうことなど、相談をいただくたびに大変さは把握していました。
 しかし、世の中のお母さんの大変さは、私が想像するものとは比べものにならないと知りました。毎日誰に頼まれるわけでもなく、給料をもらうわけでもなく家事をする。自分の趣味ややりたいこと、おしゃれも我慢し、休むことなく、家事と子育て。だからと言って褒めてもらえるわけでもなく…。「これでいいのかな…?」「どこどこの家庭に比べて…」と、正解も不正解もわからないなかで子育てを続けていく不安。
 私は友人に言いました。「うん、うん。そっか。本当によくがんばってるよ」と。私は幼児教育に関してアドバイスをするつもりはありませんでしたが、友人は「聞いてくれてありがとう」のあとに、「聞いてくれるだけでいいっていう人もいるけど、私はアドバイスがほしい」と続けました。

 意外でした。共感はしてほしい。そのなかで解決策を求めていない人もいれば、解決策を求めている人もいるんだ、と知ったからです。母親というものを「頭」で理解しているだけではダメだと衝撃を受けました。本当に一人ひとり違うんだということを痛感しました。そして次の瞬間、頭に浮かんだの保護者のみなさまのことでした。
 私はどこまでわかっているのだろう。私はどこまで味方になれているのだろう。寄り添えているのかな、何にもわかっていないんじゃないかと不安にすらなりました。もちろん花まるでは勉強を教えること、お子さまを「メシが食える大人」にすることを第一に考えています。一方で、保護者のみなさまにとって「安心」を提供できているのだろうか。そんな自問自答が始まりました。

 「子育てに正解はない」とよく聞きます。私も保護者の方に伝えてきました。それはつまり、子どもの数だけ子育ての正解があるということです。だからこそ、常に迷いや不安と隣り合わせなのだと思います。
 母親がニコニコでいることが、子どもにとっても幸せ。母親が一人の「人間」として輝けることが、どれだけ素晴らしいことなのか。これからも、保護者のみなさまが少しでもニコニコでいられるように、そして母としてだけでなく、一人の人間として輝いていられるように、私にできることがあればお手伝いをさせてください。何かお悩みや相談があれば、電話でもメールでも。たとえば「子どもといっしょに500円貯金を始めました」や「キャラメルを食べたら歯が抜けて家族みんなで大笑いしました」など、日常でのささいな出来事でも構いません。連絡帳へのコメントなどもお待ちしております。

 大事なことに気づかせてくれた友人に、そして立派な母親に感謝です。

花まる学習会 林飛翔(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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