関西出発の冬の野外体験「本気で遊べ!真冬の外遊び王国」に、班リーダーとして参加しました。「巨大紙飛行機飛ばし」や、刀を持って腰につけた紙風船を割るスポーツチャンバラの「サムライ」、「百人鬼ごっこ」などなど、集団だからこそ楽しいワクワクする外遊びがたくさん体験できるコースです。受け持った班で最年少の1年生Hちゃん。野外体験初参加で、手袋や帽子を忘れてきてしまうなどの多少のトラブルはありましたが、バスに元気に乗り込みました(忘れ物があるときは、代わりを用意したりあとから届けてもらったりします。Hちゃんも活動に支障なく参加できました)。バスレク恒例の「名前覚えゲーム」では、「アンカーをやりたい!」とやる気満々。班の仲間全員分の名前を覚える役に進んで立候補するHちゃん、「早くお友達と仲良くなりたい。頑張ろう!」と背伸びをする姿が印象的でした。
そんなHちゃんが「おなかが痛い」と言い出しました。2日目のサムライのとき、一度やってみて怖さを感じたのか、次の一歩を踏み出すことができなくなってしまいました。その後、百人鬼ごっこのときには、ついに勇気と体力が尽きてしまったのか、とうとう最初から「やりたくない」と後ろ向きになってしまいました。鬼ごっこエリアに一歩踏み出せず、外野にとどまっているHちゃん。近くにいたリーダーが助け舟を出し、「ここを越えたら、どんなものが見えるだろうね?見に行ってみたら」と語り掛け続けて、やっと一歩を踏み出すことができました。試合が終わると、怖さをこらえていたHちゃんは、わーっと泣き出しながら私のもとに駆け寄ってきました。外へ一歩踏み出してチャレンジして、安心な場所へ戻ってくる。その繰り返しで強くなっていくのがこの時期の子どもたちです。「よく頑張ったね~!!」と思い切り彼女の頑張りを認めました。
Hちゃんのいるチームには遊び上手な子が多く、少しでも空き時間があればお絵かきを始めたり、ハンカチ落としゲームをしたりしていました。Hちゃんも一緒に遊んでいたのですが、人狼ゲームで盛り上がっていたときは後ろに引いていて「私、見とくね」と参加しない様子でした。3年生の子が気づき、ルールが難しいのだろうと思って「一緒にやろう。教えてあげるよ」と優しく手引きをしていたのですが、どうも普段の笑顔がありません。おそらく、知らない言葉ばかりで参加しにくいのだろうな…と、Hちゃんの様子から推測した私は、「Hも楽しめるようなゲームに作り変えてみるのはどう?」と、みんなに提案してみました。するとできたのが、子どもたち特製の「たのしい人狼」です。
人狼の世界は「人狼 vs 村人」という殺伐とした世界観なのですが、子どもたちが考え出したのは「カレーを作る人間 vs 野菜」という、何ともほのぼのとした設定でした。「私、何役になるかな~。じゃがいもかな~」と、Hちゃんも笑顔で参加できました。やりたくない子を置いて遊ぶのではなく、みんなで楽しい時間を作るにはどうすればいいか考えて工夫する。そして、そのプロセス自体を楽しめることが素敵だなぁと思いながら、子どもたちの様子を見守っていました。
解散時、「ちゃんと活動に参加できましたか…?」と不安そうなお母さまに、百人鬼ごっこで一歩踏み出せたことを伝えると、「よかったです~!」と安堵の様子でした。Hちゃんのご家族にとっても初めての野外体験。慣れないなかでも送り出していただいた結果、Hちゃんひとりの成長だけでなく、班の仲間の成長にもつながる素晴らしい時間になりました。
いま、感染症対策の影響で、集団生活を通じての学びの機会はますます貴重なものになっていると感じます。花まるの野外体験は、とびきり濃い体験ができるよう、送り出してくださる保護者のみなさまのご協力のもと、これからも続けていきます。次は3月末。どんな成長ストーリーが生まれるのか、いまから楽しみです。
花まる学習会 永見真里佐(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。