【花まるコラム】『もうひとつの』西山由乃

【花まるコラム】『もうひとつの』西山由乃

 4回のうち2回をオンラインで実施した2月の授業。「花WEB(緊急時は花まるをWEBで)」を実現させることができたのも、保護者のみなさまのご協力があってこそのことです。誠にありがとうございました。
 最初は慣れないオンライン授業にドキドキしている様子の子どもたちでしたが、自分の顔も映るように画面に見せるテキストの位置を調整したり、スタンプで自分をアピールしたり、新しい拍手の仕方を発見したりと、子どもたちの適応能力の高さを感じた花WEB期間でした。

 節分の日に鬼のお面をつけて登場した年中のSくん。「幼稚園で作ったの!」とお皿で作ったお面と、画用紙で作った金棒を見せてくれました。教室でおこなった「型遊び」の思考実験では書いたものすべてに手足を書いて〇〇マンを作ったり、「毛糸」の特別授業では黄色の毛糸をパスタに見立てたり、想像力豊かなSくんは工作上手。お母さんからもご家庭でよく工作をしていると聞いていましたが、おうちで作った作品を見るのは初めてのことでした。
 そこからSくんの作品披露会がスタート。「これは家で作ったんだ!」という鬼のツノつきヘアバンドに、以前の特別授業で作ったビニールの服に新たに手を加えたハートのワンピース。あのときの服がこんなに変化を遂げたのかと驚きました。一つひとつの作品を大切に紹介するSくんの姿を見て家に帰ってからも楽しんでいる様子を知ることができたのは、オンライン授業だからこそです。

 オンライン授業ではミュートを外したまま授業を進めることが多く、教室では聞こえない子どもたちの小さな独り言が聞こえてくることもあります。また、発言者の画面のまわりが黄色くなるため誰の声なのかもすぐにわかります。
 3年生のHくんは控えめな性格で、いつも友達の発表を朗らかな笑顔で真剣に聞く姿が素敵な子です。お題と同じ形を作るキューブキューブ(空間認識力を鍛える立体教具)の時間に、「これ、全然わからないなぁ…」と独り言が聞こえました。その言葉に対し「Cのキューブは、ねているね」とヒントを伝えると「そういうことか!」とHくんの画面の枠が黄色に光りました。教室ではまわりの声にかき消されてしまい私の耳まで届いていなかったであろう小さな声を拾うことができました。そのあとにおこなったパターンメーカーでも「よし!あとは立たせるだけだ!」と4枚の板を縦に積むチャレンジをしていたHくん。ちょっとした声も聞こえるオンライン授業だからこそ、どんなことにも前向きに挑戦するHくんの素敵なところをまた1つ見つけることができました。
 ほかにも、家のなかからお題に沿ったものを持ってくる「トレジャーハント」や、学年で分かれておこなう「チャレンジタイム」など、オンライン授業ならではの取り組みによって子どもたちの新しい一面を見つけることができました。

 教室では、集中しているときの真剣な息遣いや、全力で授業に参加する熱量を感じることができます。アイコンタクトで承認ができるのも対面授業ならではです。そしてなによりも、同じ空間で学ぶことで刺激を与え合ったり、コミュニケーション力を向上させたりすることができるという良さがあります。
 一方、オンライン授業のいいところは感染症対策ができることはもちろんですが、「ありのままの子どもたち」を見ることができるところでもあると思います。マスクをつけず、思いっきり楽しむ笑顔の子どもたち。妹と一緒に授業を受けるお兄ちゃんの姿や、「ママ―!」と甘えるかわいらしい一面も垣間見えました。飼っているペットを紹介したり、大切にしているものを教えてくれたりする子。どれも教室で見せる姿とはまた違う、ありのままの子どもたちの姿です。

 きっと私が見たことのない素晴らしい一面がまだまだたくさんあるのでしょう。まだ知らない一面をもつ子どもたちに出会うのがとても楽しみです。

花まる学習会 西山由乃(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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