【花まるコラム】『壁を乗り越える力』水口玲

【花まるコラム】『壁を乗り越える力』水口玲

 12月も残りわずかになり、年が明ければ中学受験、高校受験、大学受験の時期となります。受験生がいるご家庭は本当にご苦労なさっていることと思います。私の娘も中学3年生になり受験を控えていますが、彼女自身は本当にひょうひょうと勉強しており、「わからないところはない?」と聞いても「大丈夫!」と言われ、少し寂しい思いをしております。 

 さて今年の大学受験AO入試をすでに受けたスクールFCの教え子が、こんなことを言っていました。
「あのとき、なぞぺー(花まる学習会の思考力教材)でやっていたこと、身につけた力のおかげで大学受験に合格した!」

 AO入試では、学科テストがあるところもありますが、主に調査書(学力評価)と、将来どのように社会に貢献したいか、学びの意欲、入学に対する意志の強さなどを評価してその大学・学部にふさわしい人物かどうかを判断します。小論文や面接、グループディスカッションやプレゼンテーションを試験項目として含めている学校もあります。

 その学校の試験では、たくさんの資料を見せられ、そのほかは特に説明もない状態で「さぁ、レポートを書いて!」と言われたそうです。まわりの受験生は何をしていいかわからずに動き出しが遅かったなか、その子はどんどん手を動かし、特に苦にすることなくレポートを書きあげたそうです。

 初めて見る問題、どこから考えればよいかわからない、そういったときにも「楽しそうだな。よし、やってみよう!」と思えたのは、彼が花まるのときに大好きだったなぞぺーがあったからこそだと言っていました。わからない問題がわかったときの楽しさ、それを乗り越える喜びを経験した彼だからこそ、「さぁ、やってみて!」と言われたときに、「こんなの無理だよ」ではなく、「よし、やってやる!」という気持ちになれたのでしょう。

 先日、授業終わり間近のタイミングで、片付けもそこそこに熱心にレインボータイム(発展的な思考力課題)を解いている女の子がいました。「そろそろ片づける時間だよ」と伝えると、ニコッとして「この問題、手が止まらなくなるんだよね。おもしろい問題だね」と言って解き続けていました。

 なぞぺー、そしてレインボータイムは、少し考えただけでは見通しが立たない問題を楽しんで乗り越える力を鍛えるものだと思っています。その子が本当に楽しそうに解きつづけている姿を見て、私もなかなか終わりの挨拶に踏み切ることができませんでした。

 難しい問題、わからない問題に出合ったとき、そしてそれを近くで私たちが見ていたとき、どうしても手助けしてしまいたくなることがあります。しかし、それを自分の力で乗り越えることができたとき、社会に出てから求められる力や経験を得ることができます。

 「楽しんで、壁を乗り越える」そんなことができる子どもたちが花まる学習会で育っていくように、これからも私自身、精進していきたいと思います。

花まる学習会 水口玲(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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