年中授業で月に1回の公園遊びをしたときのことです。それまでのYくんは毎月、滑り台遊びと砂遊びに夢中でした。しかし今回は違いました。
「ねえ先生、秘密基地作ろうよ!」と言いながら、その顔はすでに近くの茂みの方を向いているのです。ワクワクした表情につられて私も参戦。早速Yくんに「大きな葉っぱを集めてほしい!」と言われたので、選りすぐりの葉っぱたちを持ってYくんの元へ駆けつけました。
しかし、Yくんの表情は曇っています。どうしたのかと尋ねると、「秘密基地を作れるいい場所がない…」と呟きました。公園の茂みは人が入れるスペースがないほどにぎっしりと葉っぱが詰まっており、やっと見つけた葉っぱが少ないところには別の植物のトゲがあって中に入れませんでした。どうするのかなと様子をうかがっていると、私がさっき持ってきた葉っぱを近くにあった長い枝の1本1本に刺し始めました。
何やらおもしろいことをし始めたぞ、と思って見守っていると、しばらくして「できた!これね、傘だよ!」とすべての枝に葉っぱを刺したおしゃれな作品を見せてくれました。
1年生Hくん。小学生になって春からひらがな・カタカナを本格的に書き始めたのですが、なかなかうまく書けずに苦戦していました。学期に一度おこなう「花まる漢字テスト」では、納得のいく点数が取れなかった様子。表情には表れませんでしたが、1学期・2学期と悔しい思いをしていたのだと感じていました。
そして3学期の花まる漢字テスト本番の日。教室に来るとHくんは、ひらがな・カタカナ・漢字をびっしりと書いたノートを私の元へ持ってきました。「先生、これ」という言葉と、少しはにかんだ表情で。このとき私は全員に向かって「ノートを出してね」と伝えてはいませんでした。頑張った証をどうしても見せたくて真っ先に出しに来た、そういう背景がHくんにはあったのではないか。そう思い、漢字テスト本番に向けて心を躍らせていました。
さて、気になるHくんの漢字テストはどうだったかというと…なんと、特待合格!いままでの悔しさをバネに最後まで頑張り切った漢字テストとなりました。
教室では、子どもたちのさまざまな成長を見ることができます。今回は2人を紹介しましたが、全員が全員、毎回の授業で成長しており、その積み重ねによって大きく成長することができました。
来年度は、学年が一つ上がって、新しい仲間が増えます。仲間が増えるとそのぶん見聞も広がります。新しいメンバーで、新しい発見をし続けていくことで、さらなる学びへとつなげていく。そうなるように日々伝え続けていく所存です。
来年度、また一緒に楽しく勉強できることを願っております。
花まる学習会 山口大河(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。