役割があると、子どもたちに変化が起こることがあります。
高学年授業、国語の時間でのこと。内容は「物語文」でした。普段は、①順番を決めて「。」や「段落」で交代して読む。②順番を決めずに、講師に「ここまで」と言われるまで読む。③つっかえるまで読み、次の人に交代、などで進めているのですが、その日は登場人物と地の文でパート分けをして、読んでいきました。すると、いつもより感情を込めてすらすらと読んでいる子どもの姿がありました。同じ読むことでも「役割」が明確になることで、こんなにも違うものかと思いました。オンライン授業だったのですが、画面越しに「すごいな」と感動しました。
このように「役割」や「係」という名前がつくと、子どもたちのスイッチが入るな、と感じたことがあります。それは、こちらから「やってみよう」「こうしてみたら」と言うこともあれば、子ども自身が気づいて「こうしよう」となることもあります。「お手伝い」という言葉を耳にするとはりきって取り組むのも、同じことなのではと思います。
そこで思い出したのが小学生の特別授業、大会での「リーダー」です。チーム戦で授業をおこなう場合、チームごとに一人リーダーを決めていました。リーダーの役割は多岐にわたります。チームをまとめる、話し合いの中心となる、必要物を配る、並べる、困っているチームメイトを助ける、「できた!」のかけ声をかけていく……など。そういった姿を目にして、「次の大会ではリーダーをやってみたい!」と口にする子もいます。チーム内でリーダーの希望者が多ければ、やりたくてもそれが叶わないこともあります。あるとき、1年生の「やってみたい」を尊重して、2・3年生のチームメイトがさりげなくリーダーをサポートするというほほ笑ましい光景を見ました。「自分がリーダーになれなかった……」で終わるのではなく、「リーダーを支えよう」「自分ができることは」と考えて行動していたのです。
また、このような話をあるサッカースクールのコーチに聞いたことがあります。キャプテンに指名したい子どもがいたけれども、直接言葉で伝えるとプレッシャーを感じてしまうのではないかと思い、言葉で伝えるのではなく、「任せるよ」といった意味を込めて、キャプテンマークを腕にそっと巻いたそうです。その子は期待に応え、精一杯プレーをし、キャプテンの役割を全うしたそうです。そういった伝え方もあるのかと、思いもしなかった発想に驚き、子どもたちへの伝え方はいろいろな方法があるのだなと気づく機会になりました。
そして、名づけてはいませんが、教室で子どもたちが“よく気づくこと”も立派な役割、係だと思います。教室のホワイトボードには、その日に伝えたいことを書き出しているのですが、私がうっかりしていると、ホワイトボードを見て、「〇〇って何?」や「これってまだ言っていないよね?」と絶妙なタイミングで伝える子が何人もいます。気づいたことにまず感謝。そしてその発言にみんなが教室の一員なんだということを強く感じます。「ああ、そうだった。これはね…… 」子どもたちに話すときの教室の一体感は 言葉で言い尽くせないものです。そのやり取りは授業のなかの大好きな時間の一つです。
「みんな、いつもありがとう」
花まる学習会 田邊紘子(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。