【花まるコラム】『水をあげること』柴健太

【花まるコラム】『水をあげること』柴健太

 「『サボテン』(計算教材)って、花が咲くまでが長いから『サボテン』って名前になったんですか?」授業後、6年生のYちゃんに呼び止められて質問を受けました。

 花まるの計算教材『サボテン』は、毎日1ページ進めることで計算の力と学習習慣をつけるねらいのもとおこなっています。Yちゃんの質問は、教材の名前は植物のサボテンの特性になぞらえてつけたのか、というものでした。

 サボテンは長い年月を経て、ようやく花を咲かせます。なかでも月下美人という品種は、なんと開花までに5年かかるようです。
「あと、サボテンは定期的に水をあげないといけないですよね」と彼女は続け、「確かに、そうだね!」と私が言ったことを受けて満足そうに帰っていきました。

 彼女が帰ったあと、定期的に水をあげることは何を意味しているのか、と考えました。

 水をあげる=「『サボテン』に取り組むこと」と置き換えてみるとしっくりくるような気もしますが、サボテンには水をあげない期間があり、毎日必ずやることを大切にしているそれとは、少し違います。

 では、「認められること」だと考えてみるとどうでしょうか。

 6年生にもなると、お母さんやお父さんに毎日宿題を見てもらったり「宿題やったの?」と言われながら隣について進めたりすることもなくなってきます。口出しをすると「あっちいって!」とけんかになり逆効果な場合も…。

 教室でも、そうです。「見て見て!」とアピールしてくるのは低学年の子たちが圧倒的に多く、高学年になると自分からアピールすることも減り、こちらが「すごいじゃん!」と伝えても「まぁ…」とつれない反応が多くなります。あんなに「見て!」と寄ってきていたのに…と一抹の寂しい気持ちも抱くものです。

 大人の声かけが重要な低学年とは違い、高学年になると自分のなかで成長を実感して自信をつけることができるようになります。それは、子どもたちだけの世界=ギャングエイジの時代を経て、大人からの評価よりもまわりの子にどう見られるかがとても重要になってくることも理由の一つです。

 こうして大人の階段を上っていくものではありますが、それでも誰かに認めてもらうことは嬉しいものだということは、子どもたちの表情を見てみるとわかります。高学年の子たちにとっては、オーバーリアクションで「すごいね!」と褒められるより、「おぉ、ここまで一人でできたのか…」と心の内が漏れるような声かけや、事実をそのまま伝えられることのほうが刺さるな、というのが、現場で見ていて感じるところです。

 実はそういう声を待っているのだろうと想像すると、Yちゃんをはじめとする高学年の子どもたちには、低学年の頃とはまた違うかわいさが見えてきます。

 以前、筋トレを始めようと決心したのですが、情けないことに三日坊主になってしまった私。雨の日も風の日も、ちょっと疲れている日でも毎日「サボテン」(宿題)に取り組むことは想像以上に大変なことだと、身をもって感じます。試行錯誤の結果、毎日夜に歩く時間を作って運動するようになりました。妻から「今日も歩いてきたんだね」と言われることが、続けられている秘訣です。

 たまに保護者の方から「ちょっとやせましたか?」と言っていただけることもありますが、これから着ぶくれする季節に入ってきます。それでも言われることが目標ですが、まだまだ先になるでしょう。サボテンのように長い年月をかけて花開くように、子どもたちと一緒に頑張っていきます。

花まる学習会 柴健太(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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