【花まるコラム】『やれるまでやればできる』前原匡樹

【花まるコラム】『やれるまでやればできる』前原匡樹

 「なんとすごいことが!」
 おととい、小数と整数のテストがありました。今日その結果が返ってきたのですが、なんと百点でした。もらったとき、先生にほめられたのですが、「できていたんだ!」とおどろきの気持ちでいっぱいでした。たくさん復習した成果が出ました。……

 5年生Aくんが先日書いた作文の一部です。去年から高学年クラスに通っているAくん。スタートして数か月は、「動画で予習する」ことに苦労していました。視聴してもわからないところが多く、理解度をはかる「確認ペーパー」に取り組んでも、なかなか進みませんでした。
 Aくんと繰り返したのは、「わからなかったところを一緒に復習する」ということ。わからなかったところ・ミスが多かった単元は、授業が終わったあと、ときには授業がない日も使って、一緒にもう一度解きました。ただ正直、居残りをするAくんを見て、「辛そうだな…」と、私も苦しくなる日がありました。予習で手を抜いているのであれば話は別ですが、Aくんは頑張って予習している。けれどその結果が授業で現れてこない。Aくんの気持ちが切れないか心配でしたが、「わからないもの、ミスをそのままにしない」ことを伝えたい一心で、Aくんと一緒に取り組み続けました。
 流れが変わったのは夏休みでした。高学年クラスでは8月末に、「夏模試」という復習テストを実施し、自分の理解度チェックを行います。夏休み前、子どもたちには「夏模試に向け、1学期の復習をしよう」と伝えていました。具体的には、自分の苦手な単元の「×解き」(解きなおし)をもう一度やろうという内容です。
 Aくんも確認ペーパーの×解きを頑張っていました。ただ「夏模試」は、確認ペーパーと同じ問題ではなく、初見の問題がたくさん出ます。限られた時間でどこまでできるか、すごく不安でしたが、その不安をかき消す結果になりました。なんと算数も読解(国語)も、8割を超える正答数。この結果に私もお母さんも大喜びでしたが、一番喜んでいたのは間違いなくAくん自身。声で喜びを表現することはありませんでしたが、明らかに彼の表情と行動は大きく変わりました。「夏模試」以降も、ときどき居残ることがありましたが、「先生、今日も復習頑張ります!」「先生、来週もう一度テストを受けたいので、復習します」と自分から言うようになりました。その流れで「冬模試(2学期に学習した内容の確認)」でも良い結果を出したのです。
 ほかの行動にも良い影響が出るものです。2学期になると、教室で私が全員に問いかけたことに対し、手を挙げて自分の考えを言えるようになりました。4年生のスタート時には考えられないほど、彼は大きな自信を得て5年生に進級しました。いまでは、予習の段階でポイントを掴むことがうまくなり、確認ペーパーでは理解度の高さを見せています。
 冒頭の作文は、こんな過程で変化してきた彼が書いたものです。誰よりも復習の大切さ、復習すればできるようになるということを知っているAくんだから書ける作文。「たくさん復習すること」はすごく地道で、誰もが逃げたくなることです。しかし、力をつける道の一つであることに間違いはありません。

 先日、授業で解いた確認ペーパーにこんなことを書いていた子がいました。
「宿題をやってきて、わかってから解くと楽しい!」
その子はこのときの気持ちが原動力となって、怠けがちだった宿題のリズムが良くなりました。
 一方、授業前の動画視聴、演習ペーパーを頑張ったのに、確認ペーパーであまり良い結果が出ないと、マイナスな気持ちになる子、悔しい気持ちになる子、恥ずかしい気持ちになる子もいます。ときどき、ごまかしたくなる子もいるかもしれません。ごまかすことが常習化してしまえば力はつきません。自分のミスに向き合えていないからです。Aくんが力をつけられたのは、自分のミスに向き合えたから。Aくんが私に教えてくれました。「時間はかかっても、向き合えば絶対に力はつく」と。Aくんからの学びを胸に、引き続き子どもたちのつまずきに一緒に向き合っていきます。

花まる学習会 前原匡樹(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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