【花まるコラム】『幼児の特性』相澤めぐみ

【花まるコラム】『幼児の特性』相澤めぐみ

 先日行った、小学生のHIT(花まる脳力テスト)での出来事です。1~3年生が算数のテストを行う際に、私は次の注意点を伝えました。

・式と答えの両方を書こう
・答えには単位をつけよう(~こ、~まい など)

 いざ、テスト開始。子どもたちの答案を見て回ると、早速答えしか書いていない子を発見しました。答えの単位を書いていない子もちらほら。そこで、テストの終盤にもう一度「式と答えは書いてあるかな?」「答えの単位を忘れていないかな?」と全体にアナウンスしました。そう言われると大半の子が自分の答案を見るのですが、「見ておしまい」で、ミスに気づく子はあまりいませんでした。こういうミスをしたテストを子どもたちが持って帰ると、保護者のみなさまは「なんてもったいないミスを…!」「きちんと見直しをしなさいよ!」と思われるのではないでしょうか。私も自分の娘がそうだったら、同じことを思うに違いありません。
 また、先日の年中クラスの授業での出来事です。この日は授業の冒頭に絵の具を使って作品づくりをしました。課題がすべて終わり、少しだけ時間に余裕があったので、子どもたち一人ひとりを呼んで、直接作品を返却することにしました。なかなかこういった機会はないので、「一人ひとりの作品の素敵なところを言葉にして、子どもたちに伝えよう。きっと子どもたちは喜ぶだろうし、自信がつくはず!」と私は意気込んでいました。いざ名前を呼んで言葉をかけると、子どもたちはなんだかそわそわした様子。私の話が終わり、作品を手渡されるやいなや、一目散に自分の席に戻る子もいました。「なぜ…?」と思い、席に着いた子どもたちを見ると、みんな真剣にIキューブ(空間認識力を鍛える立体教具)の高積みや、階段になるように積み上げる練習をしていたのです。真剣に取り組んでいたときに私が名前を呼んだので、みんなIキューブが気になって、気になって仕方がなかったのでしょう。そんな子どもたちの様子を見て私は「幼児期は振り返りができない」ということを、改めて思い知らされました。

 花まる学習会の講演会や説明会で幼児の特性についてよくお話ししていますが、幼児期(4~9歳)の子どもたちは「振り返ること」が苦手です。冒頭に書いた「算数のテストの見直し」はその最たる例で、一度解いた問題をもう一度解くことを、幼児はとてもいやがります。そのため「見直しを!」と伝えても、本当に「見ただけ」で終わりにしてしまうのです(注意深く見直しができる子もいなくはないですが、ほぼいないと言えます)。今回はテストだったこともあり、少しずつ見直しの大切さを知っていってほしいという思いから伝えましたが、本当の意味で見直しができるようになるのはもう少し先でしょう。
 また、年中クラスの授業の事例からは、幼児期は振り返りができないからこそ、「ほめる・認める声掛けはその場でする」ことの重要性を再確認しました。作品のよさを伝えるなら、作っているときや完成した直後に伝えることが鉄則なのだと。子どもたちの関心ごとはどんどん移り変わっていくので、その場で声を掛けなければ意味がありません。それを肝に銘じて子どもたちに接していかなければ、と改めて思いました。
 では「一体いつになったら振り返りができるようになるのか」ということが気になるところですが、それは4年生(10歳)以降です。個人差はありますが、だいたいこのくらいの年齢から振り返ることができるようになり、ようやく「見直しをする」「復習する」ということが意味をなすようになります。

「幼児期は振り返りができない(苦手)」
 このことを知っているだけで、ご家庭でのお子さまへの声掛けが少し変わるかもしれません。わが家では、つい「昨日も言ったよね?」と、娘に言ってしまうのですが、昨日の話題を取り出しても、幼児期の真っただなかにいる娘にはあまり響かないでしょう。忘れているなら都度教えてあげる。とても忍耐がいることですが、実践していきたいものです。

花まる学習会 相澤めぐみ(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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