先日、教室で子どもたちと遊んでいて自分の眼鏡を壊してしまいました。その後、新しく購入を考えていましたが、マスクを着用しているとレンズが曇ってしまうことに困っていたため、生まれて初めてコンタクトレンズ購入を決意しました。
しかし、目に物を入れることに抵抗があり、目薬を使用するのも苦手な私は、コンタクトを入れることに大苦戦。眼科で練習をしたときは、片目に装着するだけで90分もの時間を要しました。いい大人がコンタクトレンズの装着に90分も手間取っていることはお恥ずかしい限りですが、私にとっては精一杯の挑戦だったのです。
そして、毎日練習すれば上手くなると考え、思い切って数か月分のソフトレンズを購入しました。それからは両目にコンタクトレンズを入れることに全力を尽くす毎日。しかし、数日間はどう頑張ってもレンズを装着できず、出勤時間になり、諦めて裸眼で過ごす日が続きました。友人や会社の同僚たちも、コツを一つひとつ丁寧に伝えてくれるのですが、それでもできない不器用な私。
「なぜそんなにも入れられないのか」
「コツを覚えれば簡単ではないか」
と言われたのですが、上手くいかないことに明確な理由などありません。理屈を知ろうが、コツを意識しようが、できないときはどうしてもできないのです。
同じような状況が子どもたちの活動でもありました。雪国スクールでスキーに初挑戦をする子どもたち。初めて雪原を滑る子は、スキー板を履いて立ち上がることさえ一苦労です。立ち上がろうとしても足がガクガク震えてしまったり、立てたとしてもバランスを取れずに転んでしまったりしています。私もコツを伝えてサポートするのですが、それでも最初は上手くいかずに、子どもたちは何度も挑戦していました。
伝え方を変え続けるものの、すぐに習得できるものではありません。何度も転び、その度に諦めずに挑戦し続けて、ようやく立てるようになったのです。その後も、緩い斜面を滑る練習や、ブレーキをかけて止まる練習に挑戦。何度も失敗を経験しましたが、時間をかけて成功したとき、子どもたちの表情には達成感が見られました。
授業では、年長のKくんが「つみき数え」の問題に挑戦していました。テキストに描かれた積み木の絵を見て、いくつ積み重なっているのかを答えていきます。見えている積み木はもちろんのこと、問題によっては、紙面上では見えない箇所もイメージしながら考える必要があります。見えない箇所も瞬時にイメージして解ける子もいますが、Kくんは見えない部分をイメージできずに頭を悩ませていました。
「この積み木が2段目に置けるのは、下にも積み木があるからだよね」
と言葉で説明をするのですが、その場では納得しても翌週の授業では同じように苦戦してしまいます。一度解けたからといって、次もできるとは限らないのです。しかし、毎週考え続けていくことで、彼の経験値は確実に積みあがっていきました。何度も解き続けていくうちに、図形をイメージすることに脳が慣れてくる。そしてついに、Kくんはすべての積み木を数えられるようになったのです。
うまくいかずに苦戦している子どもたちを見ていると、すぐにできるようにしてあげたくなりますが、どんなに言葉を変えて説明をしたとしても、なかなかうまくはいきません。でも時間をかけて挑戦すれば、いずれはできるようになるのです。大人にできることは、言葉で伝え続けることよりも、できるまで根気良く見守り、寄り添ってあげることなのだと思います。
早いものでコンタクトレンズの装着に挑戦して1か月が経ちました。90分も時間をかけていた不器用な私も、10分あれば何とか両目にレンズを着けることができるようになりました。いい大人が些細なことで何を喜んでいるのだと我ながら思いますが、子どもたちの挑戦に対して気長に見守り、寄り添っていこうと改めて思えたできごとでした。
花まる学習会 桂田拓弥(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。