【花まるコラム】『宇宙旅行』石須孝志

【花まるコラム】『宇宙旅行』石須孝志

 日本時間の12月8日。実業家の前澤友作さんを乗せたロケットが宇宙へ飛び立ちました。日本人初、民間人の「宇宙旅行」のスタートです。「いつか自分も宇宙に行ってみたい」なんて、小さい頃に夢見たことを思い出しますが、「どうせ、そんなことは無理だろう」と思い続けていました。ですが、もしかしたら…。そんな夢も“いつか”実現するのかもしれません。そのために必要なことはまず、自分自身がそんな未来を思い描くことからなのでしょう。

 さて、12月を迎えた先日の授業で、ある年長コースの男の子がこんなことを言っていました。
「ひらがな、だいすき!いまね、カタカナも、れんしゅうしているんだよ!」
真っ直ぐな瞳で私に伝えてくれました。思い返してみると、6~7月頃は「ひらがな、にがてだから、ひらがななんて、かけない」とネガティブな言葉ばかりを口にしていました。そんな彼がこの半年間で、ひらがなに対しての自信を持ち、カタカナの練習に対しても、前向きにとらえていることに成長を感じます。

 彼はたった半年で、なぜここまで肯定的な気持ちを持つようになったのでしょうか。もちろん、おうちや花まる、幼稚園でたくさん練習を続け、書けるようになったことが自信につながっているのは確かでしょう。「できる」ことは当然ながら自信につながる大きな要素です。ですが、振り返ってみると、まだまだ書けない字があった9月頃からすでに「ひらがながすき!」と言いはじめていました。実はそこには、お母さまの声かけが大きな影響を与えていたのだろうと感じています。

 お迎えの際に、お母さまに対して「ぼく、ひらがなかけない」とネガティブな発言をすることがたびたびありました。そんなとき、お母さまはすかさず「名前は書けるんだよね」「この前、はひふへほを上手に書けるようになったんだよね」とプラスの言葉をかけ続けていらっしゃいました。その言葉を聞くたびに、本人は少し恥ずかしそうにも頷く。次第に、書けるようになった文字のことを、自ら教室で話すようになっていったのです。お母さまのお声かけは、お迎えのときに限ったことではなく、おうちの中やさまざまな場面で発せられていたことでしょう。だからこそ、ネガティブになりそうだった彼の心も次第に、肯定的に変わっていったのだと思います。

 たとえば、書けない平仮名が半分くらいあるとき。「まだ書けない平仮名が半分ある」ととらえるのか、それとも「書けるようになった平仮名が半分ある」ととらえるのか。どうとらえようとも、「書けない平仮名が半分ある」事実は変わりません。違いは解釈のみ。ただ、人の“価値観”や“行動”を決定づけているのは、この“解釈”によるものです。目の前の出来事をマイナスに捉えればその解釈は足枷(あしかせ)となり、プラスにとらえればその解釈は翼にもなります。目の前の課題ができたかできていないかと同じくらい、“考え方の癖”が成長に大きな影響を与えます。だからこそ、子どもたちに肯定的な価値観と、肯定的に物事を捉える癖を身につけてほしい。私は常に目の前の出来事を肯定的にとらえ、それを言葉にしていくことを実践し続けたいと思います。

 話を少し宇宙に戻しましょう。宇宙旅行について調べていると、ロケットが大気圏を飛び出し、宇宙に出るための速度は7.7km/秒だということがわかりました(東京―熊本間を約3分で飛行する速度です)。そのとき、搭載された燃料の半分以上を使うそうです。地球にある強い引力と切り離れるためには、大きなエネルギーが必要なんだなぁと。そして、普段その引力を考えたり感じたりすることなく人は生活しているなぁと思いました。引力は、地球に限ったことではなく、人間にも内在しているのではないでしょうか。そして普段、考えたり感じたりすることのない“考え方の癖”は、強い引力を持っているのだと思います。引力には当然、肯定的なものも否定的なものも含まれます。だからこそ、私自身が素敵な引力を持ち、発信し、惹きつける人でありたい、そういった環境を作っていきたいと切に願います。

花まる学習会 石須孝志(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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