先日、引っ越しを機に花まるオンライン教室に異動したAちゃんとZoomで話す機会がありました。日本から遠く離れたヨーロッパの地。距離にして約9300㎞、時差にして約8時間。会社から教室までの距離もそこそこあるなと感じている自分にとっては、相当遠くに感じていましたが、画面に映っているAちゃんと話していると、距離を感じることは微塵もありませんでした。便利な世の中になったものだなぁと思いつつ、きっとこういうやり取りは、当たり前の世界になっていくのだろうなとも感じて嬉しくなりました。
Aちゃんは年長から花まるに通っていました。何事にも真面目に一生懸命取り組むけれど、自分の意志を伝えるのはちょっぴり苦手。手をどんどん挙げて発表する!…ことはあまりなく、本当はいやだなと思っていることであったとしても、何も言わずにグッと我慢してやる…そんな子でした。それがわかったのはある日の授業。ページがびりびりに破れたサボテンが出てきました。「どうしたの?」と聞くと「ちょっとこぼしちゃって…」と。そんなになるものかなぁと思い、お母さんに様子を聞いてみました。Aちゃんは当時2年生。「実は…サボテンがうまくやれないから、イライラしてサボテンのページを鉛筆でぐちゃぐちゃにしてしまうんです」とのことでした。外から見れば立派に頑張っているように見えますが、家では我慢しているものを吐き出していたということなのでしょう。日々の習慣は本当に大切なものですし、基盤力を伸ばしていくために宿題を出していますが、子どもたちにとってそれは、結構大変なことであるということも一方で理解はしているつもりです(だからこそ、家でも教室でも声かけが大切!)。
それでもAちゃんが宿題を頑張り続けたのは、花まるが協賛しているコンサートの「Shining Hearts’ Party」(以降SHP)のためでした。SHPには、花まるグループの子どもたちが中心となって集まったShip Kidsたちが歌や手話を披露するプログラムがあり、Aちゃんは1年生の頃にそのメンバーとして参加してくれました。「あのおとなしいAちゃんが?」と思いましたが、ステージに立って立派に歌う姿に心を打たれたことを覚えています。Aちゃんにとって、SHPはとても大切なものだったのでしょう。「来年もShip KidsとしてSHPに出たい!」その思いで、Aちゃんは宿題の大変さを乗り越えることができたのです。
現在、Aちゃんは花まるオンラインで「サボテン」(計算教材)や「あさがお」(書き写し教材)に日々取り組み、花まる漢字テストに向けて漢字練習にも取り組んでいるとのこと。「Aちゃんがいまいる環境は、誰もが経験できるものじゃない特別なもの。さみしいこともあるだろうけど、Aちゃんなら乗り越えられるよ。ヨーロッパで見る風景、人とのかかわりとか、見たもの、感じたことを言葉にして残していってほしいな。きっとそれは大きくなったときに、Aちゃんにとってかけがえのないものになるから」そう伝えました。物理的な距離は離れていても、心の距離は近くに。Aちゃんの人生をこれからも応援していきます。
花まる学習会 佐藤暢昭(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。