【花まるコラム】『子どもたちの発想を豊かにするもの』村井美月

【花まるコラム】『子どもたちの発想を豊かにするもの』村井美月

 年長授業でのことです。いくつかの絵のなかから「ほかとちがうものをさがす」という問題がありました。その日は、ダチョウ・クジャク・フクロウ・七面鳥・アザラシの絵が描かれたものと、おにぎり・サンドイッチ・パスタ・ハンバーグ・ジュースが描かれた問題の2種類に挑戦しました。作問の意図としては、鳥類と哺乳類、食べ物と飲み物の違いに気づいてほかと違うものを1つ選ぶ問題です。
 そのページを見た瞬間、子どもたちは「はい!」「あのね!」と次々に挙手しました。

「アザラシのしっぽがエビフライみたいなのと、クジャクのしっぽが木の枝みたいだから、この2つがほかと違う!」
「このお皿はほかのお皿よりも大きいからほかと違う!」
「この料理には野菜が入っているから、ほかとは違うんだ!」
まさかの解答に驚きを隠せませんでした。子どもならではの着眼点に感心した私は、
「確かに!すごいところに気がついたね!」
と返答しました。
すると、さらに子どもたちは、
「あ!ここも違うかも!」
と新たに発見していきました。

 アノネ音楽教室のレッスンでのことです。想像力を膨らませる教材として、講師と子どもで連弾をする「miyoshi」という楽譜を扱っています。「miyoshi」では、子どもが弾く簡単な単旋律(単音のメロディー)に講師が伴奏をつけるかたちで進めていきます。講師の伴奏が加わると、「すごい!レベルアップした曲になるね!」と子どもたちは喜びます。
 小学2年生のMちゃんが弾くメロディーに伴奏をつけた際に、明らかに暗い音の響きという印象を持った私は、「暗い感じがしない?」と聞いてみました。するとMちゃんは「え!明るい感じだよ!踊っている感じ」と答えたことに驚かされました。音の響きをどう捉えるかは、正解があるわけではありません。作曲者の意図はあるのでしょうが、それをどう演奏するか、どう感じるかは演奏者の自由です。

 この2つのできごとから、私は普段から「子どもたちに正解を押しつけていないだろうか…」「子どもたちの考える幅を狭めていないか…」と思いました。
 いまは、「ほかとちがうもの」を2つ選んだとしても、そこに理由があればいいのです。私が「暗い印象」と感じた音を「踊っている感じがする!」と感じても、もちろん構いません。子どもたちは、まだ知らないことがたくさんあります。だからこそ、自由に自分で想像して、考えているのです。

 子どもたちは本来、考えることが大好きで得意なのです。それを好きであり続けるためには、自分の考えを認められることが大切です。それは、テストでいい点を取ったから褒めるということではありません。たとえば、正解のない問題で、子どもたちが考えたことや何気ない疑問を受け入れる。そうしたことが子どもたちの発想を豊かにしていく。改めてそう感じたできごとでした。

花まる学習会 村井美月(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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